「できる!」ビジネスマンの雑学
2019年02月08日
[645]仮想通貨200億円、パスワードと共に消える?

 仮想通貨といえば、日本でも一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで値上がりを続けていました。高級レストランの食事代を仮想通貨で支払うIT長者たちの姿が、テレビで流れていたのは記憶に新しいところです。

 数千円で購入した仮想通貨のいち単位(たとえばビット)が、数万円から数十万円、ついには百万円超えし始めると、所有していた彼らは次々と「億り人(おくりびと)」宣言を始めました。
 億り人とは通貨の値上がりで労せずして1億円越えの資産を形成した人のことだそうです。

2019020801.jpg

 仮想通貨の皮算用に忙しかった彼らは、仮想通貨を持たない人を成功への道をみずから諦めた敗者のように見下していて、気持ちの良いものではありませんでした。

 その後、通貨交換会社への不正アクセスによる通貨の盗難、持ち逃げ、計画倒産など立て続けに起きた事件や事故により、通貨の信用はあっというまに失墜。夜の街を闊歩していたバブル長者たちもすっかり鳴りを潜めました。

 海外でもこの種の仮想通貨トラブルは起きているようです。しかも意外な形で。

暗号知る創業者が死亡 仮想通貨200億円引き出せず
 カナダ最大の仮想通貨の交換会社の創業者が急死し、仮想通貨を管理するための根幹となる暗号を知っていたのがこの男性1人だったことから、11万人以上の顧客が日本円でおよそ200億円相当の資産を引き出せない状況となっています。
NHK NEWS WEB 2019年2月5日掲出)

 仮想通貨交換会社の破産理由が、パスワードがわからないからという弁明には驚きです。もちろん会社を運営していた創業者の死が第一の理由ですが、パスワードが創業者と共に消えなければ、預金者は資産の引き出しが可能でした。いちばん大事な所に何の安全策も講じなかった点は、ルールも規制もないネット通貨ならではの事態です。

 日本円で言うなら、日銀総裁が自分のパソコンのパスワードを忘れましたから、日本中のATMがとまりましたレベルと同等です。

 お金を預けている人たちにしてみると、パスワードの紛失だけで財産が凍結されるとは考えたくもない悪夢です。

 いまでは創業者は本当に死んだのかすら疑われています。本当はどこかで生きていて、ほとぼりの冷めた頃に通貨を引き出す計画ではないか。疑い出せばきりが無いとはまさにこのこと。

 日本でも仮想通貨が勝手に引き出されたと発表して交換会社が破産しました。この事件はいまも裁判が続いています。

ビットコイン交換会社社長に懲役10年求刑 消失巡り
 仮想通貨ビットコインが大量に消失したとされる事件を巡り、業務上横領などの罪に問われた交換会社「マウントゴックス」(民事再生手続き中)社長、マルク・カルプレス被告(33)の論告求刑公判が12日、東京地裁(中山大行裁判長)で開かれ、検察側は懲役10年を求刑した。
日本経済新聞 2018年12月12日掲出)

2019020802.jpg

 ところで、仮想通貨を自慢していた彼ら億り人たちが最後に頼るのは、やはり主軸通貨の米ドル、ユーロ、円です。そもそも億り人の「億」は円換算です。儲かったときも損したときも、頭の中は円や米ドルで計算していて、本当に仮想通貨に価値を見いだしているのかあやしいものです。

 仮想の世界から一歩も出ずに換金さえしなければ、資産価値は一円も落ちませんから、仮想空間でその価値を活かせばいいのではないでしょうか。(水田享介)

コメントを書く
お名前
URL
コメント
書籍購入はこちら 語学音声アプリ 公開中 閉じる