日本語の自動車とは「自ら動くクルマ」と読むことができ、いま話題の自動運転を先取りした秀逸な命名です。この先進的な名前を頂戴していながら、自動車の本格的な自動運転はなかなか始まろうとはしません。
自動車業界の足踏み状態を尻目に、別の交通機関では着々と自動運転化が進んでいます。列車などの公共交通では「自動列車運転装置」、いわゆるATO(Automatic Train Operation)装置の開発・導入は50年以上前からスタートしており、現在では神戸ポートライナー、横浜・金沢シーサイドライン、東京・臨海線ゆりかもめなど営業運転している路線は少なくありません。
※ゆりかもめ
さらに、このたび首都圏の中核的役割を担う「山手線」でも自動運転に向けたテストが始まるそうです。
山手線で自動運転を試験 JR東、年末年始の終電後
JR東日本は4日、山手線で自動運転の試験を実施すると発表した。最新のE235系1編成に専用の装置を搭載。12月29、30日と来年1月5、6日のいずれも終電後に1周34・5キロの山手線全線で走らせ、加速、減速など車両を制御する機能や乗り心地を確認する。
(産経ニュース 2018年12月4日掲出)
山手線といえば朝夕の混雑は有名で、数分おきに到着する過密ダイヤ、駆け込み乗車や荷物挟みでなかなか閉まらないドアなど、毎朝繰り広げられるラッシュ時の混乱を知っている筆者としては、まさかあの路線で自動運転を計画するとは思ってもいませんでした。
※山手線
JR東日本ではそれなりの自信があるからの試験運転なのでしょう。
「国交省の現行基準では、鉄道で無人の自動運転ができるのは、線路に人が立ち入れない高架構造になっている場合や、路線全駅にホームドアが設置されているなどの条件を満たす場合に限っている。」(前出記事より引用)
たしかにここ数年で山手線ではホームドアの設置が急速に進んでいます。これだけの投資をしたのも、安全性のためだけではなく、将来の自動運転化を見越してのことだったのでしょう。
乱暴な言い方ですが、山手線の運行は環状線をぐるぐる回るだけ・・・です。一時間程度でまた同じ駅に戻ってきます。過密ダイヤなのでスピードを出したり、ダイヤ厳守と言うこともないでしょう。安全性さえ確保できれば、人工知能などをつかったAIシステムならば健康不安や注意力の低下がないぶんだけ、総合的に見ると人間の運転よりも安全性は高いかもしれません。
いずれ、電車の呼び方も、
自動運転電車から、自動電車となり、「自電車」
となることでしょう。
ただ、電車の運転手はいつの時代も子どもたちのあこがれの職業のひとつです。沿線で手を振る子どもたちを見かけたら、警笛を小さく鳴らす機能か、振り返す白手袋の手を自動運転装置につけてあげてください。(水田享介)