先月、筆者はただならぬ痛みに悩まされていました。左下の奥歯周辺に耐えがたいほどの重い痛みが襲ったのです。一週間ほど謎の痛みに耐えましたが、それも限界。いったん痛み始めると鎮痛剤も効かず、寝ることもできなくなりました。
虫歯もないのにと怪訝に思い鏡をのぞき込んだ所、奥歯のさらに奥に白いモノが見えました。
親知らずです。
筆者にとって人生初の親知らずが生えました。調べてみると、「親知らずは二十歳前後に生えてくる」という歯科医の解説を見つけました。
筆者もようやく大人の仲間入り、ですね。
近所の歯科医院で診てもらった所、上に向かってまっすぐ伸びているし虫歯もないのでこのままにしておきましょう、今は無理に抜くことはなくなりましたから、とのこと。
治療は奥歯とぶつかる部分を削ったようですが、それもドリルではなくレーザーのようなもので焼いたようです。口の中から焼き鳥のような臭いがしました。
かつて親知らずは勝手な方向に伸びたり虫歯になりやすく、あとあと害を及ぼすからと、予防治療と称して抜き取られていたそうです。
ドリルで削られたりペンチで引き抜かれたりするのではと恐れていた身としては、治療方法も治療方針も変わったことはたいへんありがたいことでした。
親知らずと同様に、人体にはなくてもいいといわれる臓器や器官があることはよく知られています。
たとえば、盲腸、胆嚢(たんのう)は切除しても生活に影響はないそうです。それ以外にも「退化器官」、「痕跡器官」という呼び方で、使われていない器官があります。一例を挙げると
尾てい骨、第三のまぶた(痕跡)、耳たぶ(ダーウィン結節)、体毛、立毛筋(鳥肌をたてる筋肉)、男性の乳首・・・。
言われてみればその通りですが、いまさら尾てい骨を取り出すわけにもいきません。鳥肌がたたなくなったら、お化け屋敷はのきなみ廃業ですね。
ところが不要臓器、痕跡器官というこの考え方に真っ向から反対する意見が出てきています。
人には不要だとされている内臓がパーキンソン病の発症に大きく関わっていることが判明
大腸の端に位置する「虫垂」は、現代のヒトが生きる上で特に必要不可欠な器官とは考えられておらず、虫垂内で何らかの理由で細菌が繁殖して虫垂炎を引き起こすと、重症化する前に切除されることもあります。そんな虫垂がパーキンソン病の発症率に大きく関わっているという研究結果を、ヴァン・アンデル研究所(VARI)が報告しています。
(Gigazine 2018年11月2日掲出)
日本でもあの有名な健康番組で盲腸について取り上げています。
突然の激痛!盲腸(虫垂炎)の新事実
「盲腸」は「役に立たない臓器」ではなかった?
2015年に発表された研究で、「盲腸」で手術をした人7万人以上と、手術をしていない人およそ30万人を14年間近く調べたところ、手術をした人はその後1年半~3年半の間、2.1倍ほど大腸がんになりやすいという結果が示されました【※】。
一体、何でそうなったのか?まだ研究途上ですが、「"盲腸"ってムダな臓器」というこれまでのイメージを覆すような発見が、いま相次いで報告されるようになってきています。
【※】リスクが上がったのは、手術後3年半までです。その後は、手術をした人としない人で大腸がんのリスクは変わらなくなりました。
(NHK 「ガッテン!」 2017年3月8日放映)
人間は産まれてくるまでの十ヶ月間で、人類がたどった進化の歴史をなぞっていると言われています。体のあちこちにその痕跡が残るのは自然のことでしょう。
売れ筋ばかりが整然と並んだ「とんがった」お店がある一方で、生活感溢れる雑貨が山積みのお店もあります。どちらか一方ではなく両方あるのがいいのです。
筆者の考えですが、人類はしっぽをもったまま進化すればよかったのにと思うことがあります。
そうすればしっぽを持った動物たちともっとうまくつきあえたかもしれませんね。(水田享介)