自動車産業と言えば、今でも日本を代表する「花形産業」です。
その中核となる自動車メーカーがいま、暗中模索、もしくは混沌ともいえる時代を迎えています。
これまでと同じようなクルマをいつまで作り続けられるのか。エンジン駆動のクルマはいつ終焉を迎えるのか。そのとき富士の裾野のように広がる協力工場群はどうなるのか。
そして、肝心の自分たちはこれから、収益の柱をどこに求めればいいのか。
問いかけは泉のようにわき上がるのに、答えはなかなか見つかりません。わかっていることは、これらの問いに即答できる人はひとりもいないということだけです。
自動車大手のトヨタは、自家用車は買うものというこれまでの常識をみずから取り払う新サービスを始めました。
トヨタ、月定額で車乗り換え放題 19年新サービス
トヨタ自動車は2019年から、毎月一定の料金を払えば複数の車を手軽に乗り換えられるサービスを始める。高級車「レクサス」などを自家用車のように使いながら、複数の車を入れ替えることができる。また販売店を拠点にしたカーシェアリングも全国展開する。所有にこだわらないシェア経済が広がるなかで、新車販売だけに頼らない新たな事業の柱を探る。
(日本経済新聞/電子版 2018年11月1日掲出)
自動車は主動力がエンジンから電動モーターへと移行が進むことをもはや止めることは不可能です。同時にクルマ製造技術のコモデティ化・陳腐化は急速に進行しています。数万点の部品を正確に組み立てる熟練技術から、プラモデルを作るようにパーツを組み合わせる単純作業へ‐、誰にでも高性能のクルマを作れる時代がやってこようとしています。
高嶺の花だったオフコンが家庭で使える自作パソコンに取って代わったように、コンピュータが歩んだ道をクルマも歩むのか。工場で培ってきたもの作りのノウハウは不要となるのか。
そんな問いかけすら意味をなくしたようです。家電企業が自動車を作っても驚く人はいなくなりました。
パナソニック、完全自動運転EV 21年度にも実用化
パナソニックは30日、完全自動運転の電気自動車(EV)のコンセプトカーを報道陣に公開した。ディスプレーや自動運転関連の技術を結集したコンセプトカーと、自治体や自動車メーカーなどパートナーのノウハウを組み合わせてサービス構築を進める。今後提案を進め、早ければ2021年度のサービス実用化を目指す。
(日本経済新聞/電子版 2018年10月30日掲出)
※高齢者ドライバーの存在が自動運転を後押ししている現実
自動車に乗る理由が目的地までの移動だけなら、クルマの所有も運転も他に委ねたとしても何の問題もありません。
Waymo、カリフォルニアでも公道での完全自動運転車のテスト実施へ
米Alphabet傘下のWaymoは10月30日(現地時間)、米カリフォルニア州の自動車部門(DMV)からドライバーを乗せない完全自動運転車の公道テストの許可が下りたと発表した。同州から許可を得た最初の企業になった。
同社は既にアリゾナ州フェニックスで昨年4月から完全自動運転車の公道テストを実施している。
(ITmedia NEWS 2018年10月31日掲出)
※もはや待ったなし。バスの無人運転化
米AlphabetはGoogleの持株会社です。IT企業は持てるソフトウェア技術、先行するAI技術を投入して、本格的な自動運転車を完成させようとしています。
※有人運転でカーナビとして使われるスマートフォン
※スマートフォンが運転の友
いま現在もいくつもの関連技術が開発を急がれており、実用化の時を待っています。近い将来のあるとき、秀でた才能を持つ誰かがそれらを一台のクルマに融合させた瞬間、エンジン車の息の根は止まるのでしょう。
11年前にジョブズがiPhoneを発表した日(2007年1月9日)、発売を開始した同年6月29日(日本は2008年7月11日発売)のように。(水田享介)