「できる!」ビジネスマンの雑学
2018年10月29日
[607]ブームは去ったが・・・「ペッパーくん」、おつかれさま

 2015年6月、一般向けに発売が始まった人型ロボット「ペッパーくん」。いまでは公共施設やショップ店頭などで接客係として働く姿は、さほど珍しいものではなくなりました。

 発売開始から3年が過ぎ、日本の社会で労働ロボットは受け入れられたかというと、そうでもないことがわかってきました。聞く所によると、レンタル契約の更新もなく、仕事を失うペッパーくんが続出しているとか・・・。

 いったい、ペッパーくんに何が起きているのでしょうか。

ペッパー君さようなら 8割超が"もう要らない"
 ソフトバンクグループ子会社のソフトバンクロボティクスは、2015年10月から契約期間が3年の法人向けモデル「Pepper for Biz」を開始。つまりPepperを契約した法人は今年10月から契約更改となる。
 ところが、「日経xTECH」の調査で、レンタル契約の更改を予定する企業が15%にとどまることが明らかになった。Pepperの導入を表明している44社を対象にアンケートを実施し、27社から回答を得たが、「更新予定」と答えた企業は27社中4社(15%)のみ。
AERA dot. 2018年10月25日掲出)

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※イメージ

 なまじ人に似せた形を取ったがために、人間並みの話術や接客術が求められてしまいました。ペッパーくんは最初から重すぎる荷物を背負わされ、その高すぎる期待ゆえに、あきられてしまったようです。

 その一例が次のような会話でしょう。

 お客:「歯ブラシはどこで売っていますか」
 ペッパーくん:「歯ブラシ売り場で売っています」

 ペッパーくんは間違ってはいませんがショップの案内係としては落第です。お客さんが知りたいのは売り場の名前ではなく、売っている場所のフロア数や道順をたずねているのです。

 このことからわかるように、ペッパーくんは単純な質問の中にあるお客さんのニーズを類推してご案内する、総合的な知力が足りないことがわかってきました。

 さらに大量に出回ってからは、物珍しさという客寄せパンダの価値も失われました。

 接客業に限った単機能ロボットでも、その性能には限界があったようです。

音声認識に限界が...
「変なホテル」に目玉のはずの"ロボット激減"の理由を聞いた
ピーク時は243体の「ロボット」が85体に激減
 長崎県佐世保市のハウステンボスにある「変なホテル」が、目玉だったロボットの数を大幅に減らしている。
 2015年の開業時には6種類82体を導入し、ホテルに入るとフロントにいるロボットが迎え、案内や荷物運搬、清掃など多岐にわたって活用。
 2016年には「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネスの認定も受け、その後も数を増やし、ピーク時の2017年10月に稼働していたロボットは27種類243体。
 ところが、2018年9月時点で16種類85体にまで減らしている。
FNNPRIME 2018年10月26日掲出)

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※FNNPRIME 公式サイトより

 ロボットたちは人間から仕事を奪うどころか、メンテナンスにお金も人手もかかるのですから、今のところ接客業にロボットの居場所はないようです。

 それでも、これでロボットの社会進出が遅れるというのは早計です。

 わたしたちはペッパーくんたちロボットと会話できる機会を得ました。その当時の英知を集めたペッパーくんでしたが、できることもあればできないこともあると知りました。
 21世紀初頭のロボットたちは、マンガやSF小説が描くロボットのように、人間を超えた万能機械ではないことに少し安心もしました。

 わたしたち社会がようやくロボットとのつきあい方を学習し始めたのです。

 人並みの会話能力や接客能力を持たせなくてもロボットは活用できる。そんな発想から新しいロボットが誕生しています。

 「分身ロボット OriHime(オリヒメ)」です。

 このオリヒメは、「分身ロボット」という新しいジャンルを提案しています。

※orihime-Bizを使ってみよう

 遠隔操作で対話できる装置と簡単な表情や身振りができるアクション機能を持つこのロボット。ロボットに自律機能はなく、対話も感情表現も離れた場所にいる人間が操作しています。

 最初はテレビ会議などで会話を円滑にするコミュニケーションツールとして登場しました。現在はさらに進化を遂げて、体の自由がきかない人や介護が必要な人が、このオリヒメを使って社会進出するツールになろうとしています。
 このオリヒメで車いすの方や寝たきりの方が、テレワーク就労や接客業を実現できるところまできています。

新型「OriHime-D」の身長はなんと約120cm!
オリィ研究所が簡単な肉体労働を可能とする分身テレワークロボットを発表
 オリィ研究所は育児や介護、身体障害などにより、会社に出社することが困難な人の社会参加を目的に、分身ロボットを用いたテレワークを研究・推進している。従来の分身ロボット「従来の分身ロボット「OriHime」の全長は約20cmだが、新モデルの「OriHime-D」の身長は約120cmと大きい。
このモデルを発表すると共に、このロボットを使った事業開発・研究・実証試験のパートナーの募集も行う。
ロボスタ 2018年7月11日掲出)

 日本ではマンガ「鉄腕アトム」に憧れてロボット開発に進んだ研究者も多いようです。そのため実物のロボットを評価するときに、どれだけ「アトム」に近づいたかという評価基準が存在すると聞いています。

 いきなりアトムやウランちゃんが現れるわけではないと、わたしたちは気がつきました。日本社会はこれからもさまざまなタイプのロボットに出会い、学習していくでしょう。

 人の役に立つロボットの形は、まだ誰にもわかっていません。
 未来のロボットの形とあり方は、わたしたち社会自身が作り上げていくことにほかならないからです。(水田享介)

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■関連リンク
ソフトバンクロボティクス株式会社
https://www.softbank.jp/robot/consumer/products/

オリィ研究所
http://orylab.com/

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