ビジネス用途のパソコンは、旧OSのWindows 7などがいまも現役で使われていることは、このコラムでもご紹介したとおりです。
[591]Windows 7の3年延命プラン、Microsoftから発表
いまも多くのユーザーが何の疑問も持たずに、Windows 7を使い続けていることが判明したのです。
中小企業の45%は「Windows 7サポート終了を知らない」
楽天リサーチが6月に調査した、中小企業におけるWindows 7サポート終了の認知度は55%だった。また、Windows 10へ移行中だと答えたのは42%だったという。
(ITmedia・井上輝一 2018年7月3日掲出)
中小企業のなかでWindows 7のサポート終了を知っていたのは55%と半分ちょっと。つまり45%の企業が、Windows 7のサポート終了が迫っていることを認識していなかったのです。
(当コラム/2018年9月14日掲出)
「最新のOSにしましょう」と大々的なキャンペーンを張ったマイクロソフト社でしたが、その思惑通りにはことは運びませんでした。
無料アップグレード期間を設けようが、サポートはもうすぐ終わりと迫ってみようが、OSの占有率で見ると最新システムへの変更はいっこうに進んでいないことは統計からも明らか。
※2018年9月デスクトップOSバージョン別シェア/円グラフ - Net Applications(筆者作成)
※2018年9月デスクトップOSバージョン別シェア/棒グラフ - Net Applications(筆者作成)
しかも、月別で統計を比較すると、ここ数ヶ月は「Windows 7 のシェアは微増、Windows 10 は減少」しているのです。
使用者のみなさんはおそらくこう思っているでしょう。
「仕事のPCは問題なく動いている。それを変更する理由はない」
「OSを変更して不具合が出たらその対策はユーザーの責任。本業に差し障る可能性があるなら変えたくない」
ユーザーにとってメリットの薄いシステム変更など、受け入れられないのは当たり前かもしれません。
業を煮やしたマイクロソフトは、ついに思いがけない手段で訴え始めました。
題して、
「古いPCを使っているあなた、お金を損してますよ」作戦
「4年前のPC利用は約35万円の損失」
――マイクロソフト「最新PC買った方が得」
「購入から4年以上経過したPC1台当たり、約35万円の損失が発生している」――日本マイクロソフトは10月17日、現状の「Windows 7」や「Office 2010」から最新のクラウド環境への移行に関する記者説明会で、PCを長く使うデメリットについてそう説明した。
(中略)
同社は、中堅中小企業のIT環境を調査した。その結果、経年によるPCの故障率(修理率)は1年未満だと1%未満、3年だと20%と緩やかに増加していくが、4年では67%とはね上がることが分かったという。
(ITmedia PC USER・井上輝一 2018年10月17日掲出)
その根拠としてあげているのが、「バッテリーの不具合や、OS立ち上がりの遅さ、メモリの寿命によるクラッシュなどのトラブルが4年目以降に頻発する」[同社執行役員の梅田成二本部長(デバイスパートナー営業統括本部)]からだそうです。
この意見は賛否の分かれる所でしょう。起動が遅く不具合をかかえたパソコンで仕事を続けたい社員などひとりもいません。
実は最新のPCでは、起動方法を変更したため、Windows 7のインストールはできない仕様になっています。OSは自動的にWindows 10になってしまいます。このあたりがマイクロソフトの本音でしょうか。
ところでたった4年で使えなくなるPCをパソコンメーカーは量産しているのでしょうか。そうとは言い切れません。
筆者が日常のメールチェックや執筆に使っているパソコンは、2012年8月発売でした。すでに6年以上昔のものですから、使っているだけで「35万円は損する」パソコンです。
使用パソコンは、[HP ProBook 6570b Corei5-3360M]
筆者が秋葉原で見つけた中古のこのノートパソコンは、型落ちに間違いありません。しかも液晶モニターが割れていたので、一万円以下で購入しています。
仕事で使う場合、22インチと27インチの2~3画面で作業しており、もともと内蔵ディスプレイは閉じたまま使いますから、液晶の破損は問題ありません。
このノートパソコンの良い所は、USB3.0を装備し、メモリを16GBまで内蔵できることでした。また、6年経ったバッテリーは、今も2時間以上稼働しています。
映像編集などの制作業務は、別に最新のデスクトップを用意していますが、簡単な映像チェックやスクリプトの動作確認もこのノートでこなすことができます。ノートとはいえ、意外に基礎体力があることに驚きました。
実はCPUに限ると、数年前のノートパソコンからデスクトップとの性能差はほとんどなくなっています。それはグラフィック性能をCPU内部に取り込んだためです。スペック表には[インテルHDグラフィックス x000]などと数字で表記しているのがそうです。
このタイプのPCならばノートパソコンであっても、一台で2~4画面まで表示できます。
性能不足を補うとすれば、あとはメモリと記憶装置の見直しです。メモリは最大容量まで増設することをおすすめします(OSが32ビット版なら4GBまでが最大)。またハードディスクは最新のものかSSDに交換しましょう。これでスピードの問題はおおよそ解決します。
型落ちモデルが実はおいしい!HP ノートPC Probook 6570b 軽めレビュー
HPのProbookを選んだもう1つの理由としては、メンテナンス性が良好という点があげられます。
メモリの交換は工具不要、HDDの取り外しはドライバー1つで可能なうえ、光学ドライブの交換もノートPCにしては比較的容易に行えます。
海外では、光学ドライブベイにHDD/SSDを搭載する玄人向けパーツも販売されており、自作ユーザーなら苦もなく取付けられるほどメンテナンスがしやすいモデルです。
(LAINEEMA/デジタルハードウェア徹底レピュー 2015年07月29日掲出)
35万円の損失を気にして最新マシンに交換するか、それともいまあるPCにもうひとムチ入れるのか。この機会にじっくりと検討してみてはいかが。(水田享介)