石油などのエネルギー資源がほぼ存在しない日本では、私たちは普通に生活するだけでも、電気やガスなど光熱費に少なくない金額を支払っています。
今年の夏の電気料金にビックリした方も多いのではないでしょうか。
これは「再エネ賦課金(さいえねふかきん)」という名目で太陽光発電などにかかる買い取り料金を上乗せされている事情もあります。
「再エネ賦課金」とは「再生可能エネルギー発電促進賦課金」のことで、太陽光発電を始め、風力や地熱などの再生可能エネルギーを導入する費用を国民で負担するしくみです。2012年度から比べると一般家庭の負担額は12倍にまで膨らみ、実質的には消費税2~3%の増税を受けているのと同等という試算もあるほどです。
電気代が高い理由は「再エネ賦課金」かも、意味を知っている人は17%
「再エネ賦課金」について詳しく説明しよう。再エネ賦課金とは「FIT(固定価格買取制度)」にもとづいて設定されている。FITとは、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーの導入拡大を図ることを目的に国が定めた仕組みだ。この制度により電力会社は、再生可能エネルギーで発電された電気を、割高な価格で一定期間買い取ることが義務づけられている。買取ったその費用は「再エネ賦課金」として、企業や家庭といった電気の使用者が負担しているのだ。つまり、メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所の電気も、住宅の屋根に太陽光パネルを載せて発電している電気も、つまりは、私たち国民負担というわけだ。
2012年度の標準家庭の再エネ賦課金は月額「66円」、年間「792円」だったが、2017年度の標準家庭の賦課金は月額「792円」、年間「9504円」となっている。初年度の12倍と高騰を続けているのだ。
(財形新聞 2018年1月4日掲出)
※イメージ
今年10月、九州電力ではそれだけの補助を受けながら、これ以上の太陽光発電の売電は受け入れられないと買い取り抑制を始めました。
2日連続で太陽光出力制御 九電、71万キロワットに規模拡大
九州電力は14日、太陽光発電の一部事業者に対し、発電の一時停止を指示する再生可能エネルギーの出力制御を実施した。離島を除き全国で初の本格実施となった13日に続く措置で、43万キロワット程度とした13日を上回る71万キロワット程度を制御する。週末で需要が抑えられる見通しの一方、好天で日中の太陽光の出力増加が見込まれるため、制御して大規模停電を回避する。
(産経ニュース 2018年10月14日)
再生可能エネルギーである太陽光電力がもう受け取れない状態であるなら、その地域の電力会社はすみやかに再エネ賦課金の徴収を廃止するのが理にかなっているはずですが、現実はそのようにはなっていません。
先日の北海道地震では北海道全体が丸二日間(43時間)もブラックアウト(大規模停電)を引き起こし、完全復旧には一週間近くかかりました。台風による強風が立て続けに襲った大阪や静岡県浜松市でも長時間の停電が発生しています。
北海道大停電43時間、体験ドキュメント...
電源確保&食料確保どうする?! 平成30年北海道胆振東部地震
筆者が住む小樽市は震度4ということだったが、東京で同程度の震度を何度も経験している身としては、とても震度4とは思えない「人生最大震度」とも言うべき激しい揺れだった。
揺れが収まったのと同時に停電したが、筆者宅はエントランス付近に非常灯が点いていたこと、幹線国道に面していて自動車のライトに照らされていたこともあって、完全なブラックアウトに陥ったわけではなかった。
それでも人生で数えるほどしかない停電に突然見舞われたため、やや不安がよぎったが、晴天で夜明けを迎えたせいか「なぁに、4~5時間もすれば復旧するさ」とたかをくくっていた。
ところが10時を過ぎても停電は解消されず、少々焦り出してきた。ラジオからは北海道電力(北電)の火力発電所がかなりのダメージを受けており、「電力の需給バランスが崩れた」として、全域が一斉に停電。運転を休止している泊発電所を除けば、北電最大級の苫東厚真火力発電所が復旧までに1週間以上というアナウンスが流れてきた。
(Response 2018年9月10日掲出)
被災時にこそ必要なインフラが、これだけ長期間復旧せずあてにならないのなら、やはりインフラは一社独占のままでは安心できないのではないかと考えてしまいます。
とはいえ売電できるようなソーラーハウスも、緊急時にはバッテリーが活躍する電気自動車にしても、数百万円から一千万円近くします。しかも設備の性能はおおよそ10年程度しか持たず、買い換えか高額な補修費が必要です。とても元が取れるようなしろものではありません。へたをすると次の世代にやっかいなゴミとして残してしまう可能性すらあるようです。しかもそれに支払われる補助金や買電費用はわたしたちが支払う「再エネ賦課金」で賄われているのです。
東日本大震災が発生した2011年3月11日からの数日間、夜間は大変冷え込みました。甚大な被害が発生した東北地方では雪も降りました。東北地方の人々は真っ暗な中、寒さに震え耐えたことを淡々と語るだけです。
もし関東地方で、いえ東京で電気もガスも止まっている状態であれだけの雪が降っていたら、もっと大きな問題になっていたことでしょう。
いざというとき、我が家のエネルギー問題をどうするか。災害時のエネルギー対策はどう準備すればよいのか。
何も考えずにソーラー発電や電気自動車を導入しても、生活の質が変わらなければエネルギーの供給元が多少変化するだけで、決して対策にはならないでしょう。
そんな考えを頭で巡らせていたとき、興味深いテレビ番組と出会いました。
「趣味どきっ! おひさまライフ」(Eテレ/毎週火曜・午後9時30分)
太陽は私たちにとってなくてはならない自然のエネルギー。干し野菜や干物など、太陽の下で栄養価がアップした食材のつくり方やレシピや、日光で調理するソーラークッキングの方法、インテリアやベランダの活用、庭仕事などで日光を上手に取り込む方法など、おひさまのパワーを手軽に日常生活にいかす知恵を紹介。(「趣味どきっ! おひさまライフ」・NHKテキスト より引用)
第1回 [おひさまを頂く1] 知恵がつまった干し野菜
第2回 [おひさまと暮らす 1] ハーブと暮らすエコハウス
第3回 [おひさまを頂く2] 家族で楽しむ ソーラークッキング
第4回 [おひさまと暮らす 2] 縁側カフェでひなたぼっこ
第5回 [おひさまを頂く3] うまみ凝縮 手づくり干物
第6回 [おひさまと暮らす 3] アートな暮らし フレンチスタイル
第7回 [おひさまを頂く4] 山里の"もったいない" くず野菜七変化
第8回 [おひさまと暮らす 4] ヒュッゲに学ぶ 北欧流ゆったり時間
※「趣味どきっ! おひさまライフ」・NHKテキスト 表紙
番組自体は難しいことは一切ありません。天から降り注ぐ太陽の光、太陽の熱を日常生活で受け取るにはどうすればよいか。そのことをテクノロジーではなく、昔からの知恵と現代の工夫でもれなく受け取り、蓄える方法を紹介しています。
ソーラークッキングの回では、太陽光を反射板で集めてその熱だけで調理する方法を紹介しています。[再放送・10月23日(火)/午前11:30~11:55]
ソーラークッカーはいざとなれば身の回りの不要品で手作りできること、真冬で外気温が低くても太陽さえ出ていれば調理できることなどを筆者は初めて知ることができました。
(※ソーラークッキング中はサングラスが必要です)
講師の方はアフリカの家庭でソーラークッキングの普及活動を行っているご婦人でした。インフラの整わないアフリカでは料理の煮炊きに近くの森林を根こそぎ伐採するため、国土の砂漠化が止まらないという現実があり、その解決策のひとつとして活動されているそうです。
いままで気にもとめていませんでしたが、別の回で紹介している干物や干し野菜も太陽光で作るソーラークッキングの一種ですね。
太陽から届く光を電気に変えお金に換えるのは、とても大変です。しかも災害で停電してしまえば売電どころではありません。たとえインフラは止まっても太陽は止まることはありません。
※イメージ
太陽の光と熱をそのまま活用する生活に、わたしたちはどれだけ近づけるか。電気に依存した生活の危うさを実感した今年、災害時のリスクをできる限り少なくする知恵をいまのうちから身につけておきたいものです。(水田享介)
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■関連リンク
「趣味どきっ! おひさまライフ」・NHKテキスト
(発売日 2018年09月25日)※リンク先に試し読みあり
「太陽で料理しよう-ダイジェスト/大科学実験」
(NHK for School)