「できる!」ビジネスマンの雑学
2018年01月09日
[489]ワサビが苦手な高校生。それでも日本人かという前に...

 日本人なら誰もが、ワサビの利いたお寿司やお刺身は大好きだと思っていましたが、いまではそうともいえないようです。

高校生はワサビが苦手? 岐阜大と岐阜女大調査
 岐阜など15都道府県の農業高校の生徒約600人(平均年齢16・7歳)と、介護福祉施設の利用者約70人(同86・9歳)を対象に「ワサビは好きですか」などを質問した。「嫌い」と答えた割合が高齢者は14%だったのに対し、高校生は39%と3倍近かった。
 ワサビ嫌いの高校生の割合は、男子の22%に対し、女子は倍以上の48%に達した。理由として「ツンと鼻に抜ける感覚が苦手」が多数を占めた。また「一番最初に思い浮かぶ辛い食べ物は」という質問に高校生の回答は、キムチなどのトウガラシ関連食品が88・4%を占め、ワサビ関連の6・3%を大きく上回った。
岐阜新聞Web 2018年1月5日掲出)

 この報道に筆者は少なからず残念な気持ちを持っています。

 なぜなら、あの鼻に抜ける強烈な辛みは、日本のワサビだけが持つ特性だからです。世界中どこを探しても、この辛みを調味料として使う料理は日本料理だけなのです。

2018010901.jpg
※山深い清流にひろがるわさび田

 以前のコラムでもこの研究成果をご紹介しています。

[132]少しうれしい、ワサビは日本固有種だった。
(2015年09月08日掲出)

 しかもこの辛み成分はもとから備わっていたわけではなく、日本に渡来したワサビが長い時間をかけて独自に獲得したもの、ということが最近の研究で判明しています。

「ワサビ属ワサビ」に危機が迫る
 「あまり知られていませんが、ワサビ属植物はアルカリ性の土壌を好みます。でも日本の土壌はおもに酸性です。あくまで仮説ですが、嫌いなところに来たワサビは、ストレスから辛み成分を多く出すようになったと見ています。いずれにせよ、その辛みをもったワサビを、日本人が利用したわけです」 《岐阜大応用生物科学部准教授・山根京子氏》
JBPRESS・漆原次郎 2014年1月31日掲出)

 普通なら辛くて食用には適さないワサビをすり下ろすことで、刺身や蕎麦をさらに風味豊かにする「薬味」に変えたのは、日本人が独自にあみだした知恵だったのです。

 この貴重な食文化が若いひとたちに受け継がれないのはとても悲しいことです。

 ただ、ワサビ嫌いはすべての若者というわけではないことも今回の調査でわかっています。

 調査グループの山根京子岐阜大応用生物科学部准教授(45)=育種学=は「家族が刺し身など魚料理を生ワサビで食べているのを見て育った高校生は、ワサビに対して抵抗感がない」と分析。「家庭でワサビを食べる機会を増やしていく必要がある」と話した。
(前出:岐阜新聞Web 2018年1月5日掲出)

 日本に生まれたからといって、誰もが自然に日本人になるわけではありません。上の世代が次の世代に対して、根気強く日本の食育をしていくことが大切ですね。(水)

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