「できる!」ビジネスマンの雑学
2017年09月20日
[445]秋の夜長にしっとり気分で読む物の怪の本、二冊

 秋の雨は季節が深まるにつれ、以前にもまして冷たく感じられ、冬を迎える覚悟を迫られるかのように、ひえびえとした気分になります。

 そんな気持ちによく合う本といえば、怪談物ではないでしょうか。

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『妖怪談義』(角川ソフィア文庫)
著:柳田國男

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 筆者はちょっとした調べものがあり、この本を手に取りました。日本各地に伝承されたキツネや貉(ムジナ)、イタチや河童など、妖怪とも物の怪ともつかない彼らの自在な悪戯に惑わされる住民たちを、柳田國男独特の伝聞文体で描いて見せます。

 そのしっとりと湿り気のある文章は、暗闇から容易に姿を現さない生き物たちをにぶい色に光らせては、人々を恐れおののかせます。

 妖怪のしっぽを捕まえたいのなら、現代語の意訳ではなく、ぜひ原文で。


『怪談―小泉八雲怪奇短編集』(偕成社文庫)
著:小泉八雲 訳:平井呈一



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 「雪女」、「耳なし芳一の話」、「ろくろ首」など誰もが知っている怖い話を中心に19編が収められる。平易ながらよく練られた訳(原文は英語)のため、お子さんと一緒に楽しめる良書となっています。

 アイルランド人の父、ギリシャ人の母のもと、1850年に生まれた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、両親の離婚後はアイルランドの親類に育てられました。成人後は、単身アメリカに旅立ちます。

 キリスト教世界で育ったラフカディオ・ハーンでしたが、カトリックの教えには疑問を抱いていました。アメリカで『古事記』(英訳)を読んだり、博覧会日本館などを通じて日本文化に触れたハーンは、1890年に意を決して来日します。

 そして、当時の日本には当たり前のように語られていた怪談に夢中になります。特に妻の節子が語り聞かせた怖い話をいたく気に入り、ついには『怪談』(1904年刊)として出版するにいたりました。

 現代に生きる日本人が、なぜなのかわかりませんが、アメリカ経由の妖怪祭りであるハロウィンに夢中になるのとは好対照ですね。

 秋の夜長こそ、日本古来のコワーイ話に耳を傾けてみてはいかが。(水)

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