「できる!」ビジネスマンの雑学
2017年08月30日
[436]出荷機数で世界一を達成、ホンダジェット
静岡県浜松市の小さなバイクメーカーから始まった本田技研工業が、30年もの歳月をかけて開発したホンダジェットは、日本人デザイナー、藤野道格氏(ホンダエアクラフトカンパニー社長)が主導して生まれた小型ジェット機です。 そのホンダジェットが、このたび出荷機数で世界一となりました。小型機の代名詞ともいわれるセスナ(米国)を抜いて、世界中のエグゼクティブビジネスマンから高い評価を得たのです。 この快挙と対照的なのが、三菱航空機が手がけるMRJです。先日の試験飛行でエンジントラブルが発生し、先行きに暗雲が立ち込めています。 ホンダジェットは初の世界一、MRJはまたトラブル。なぜこうも違う? ホンダの米子会社が製造・販売する「ホンダジェット」の2017年上期(1―6月)の出荷が24機になり、小型ジェット機市場で初めて世界一に立った。同機は最大7人乗りのビジネス機。15年末に納入を始めて以降、北米や欧州の企業トップら向けに順調に販売を伸ばしている。 一方、三菱重工業グループが開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」。2015年11月に初飛行に成功したものの、直後に完成機の納入予定延期を発表。その後も何度も延期になっている。22日にも試験機のエンジン1基が損傷し停止したことが分かった。試験機は急きょ目的地を変更して着陸した。MRJの試験飛行中にエンジンが停止したのは初めてで、同社は原因を調査している。 (ニュースイッチ・明 豊 2017年08月24日) 片や小型のプライベートジェットに対して、MRJは本格的な商用旅客機です。乗客数もエンジンの成り立ちも大きな違いがあります。開発の良し悪しを同列に議論しても、意味のある結論は得られないでしょう。 とはいえ、ホンダジェットの世界一達成と同時期にMRJのトラブルが起きたこともあり、多くのメディアが両者を比較しては、MRJの未来を憂える記事を発表しています。 ところが、過去を振り返ると、旅客機の開発がスムーズに進んだことは一度もありません。あのボーイング社にしても、B-787(ドリームライナー)が就航した当初、バッテリーの異常から機内で幾度も火災事故を起こしたことは有名です。 ボーイングの最新鋭787型機は巨額の開発費を回収して最終利益を出すことができるのか? (Gigazine 2015年10月25日掲出) これはリスクの高い事故でしたが、よく運行停止にならなかったものです。 さらに最近では搭載エンジンの不具合も見つかり、改良型への交換は2019年末までかかるとの見方もあります。 ANAの787エンジン不具合、ロールス・ロイスが改良型ブレード供給開始 (Aviation Wire 2017年1月27日掲出) おそらくMRJがこのレベルの事故を起こしたら、どの航空会社もMRJを使わなくなるでしょう。 だからこそ、MRJの開発がよりいっそう慎重になっている側面もあるのでは、と思えます。 先日、筆者は「所沢航空発祥記念館」で行われた講演会に足を運びました。 「「航空機から自動車へ」~マン・マシンの昭和伝説」(講師:ノンフィクションライター・前間孝則氏) 講師の前間氏自身、かつてジェットエンジンの開発者であり、ホンダジェットの藤野氏にも三菱航空機にも取材されています。この講演の中でホンダジェットとMRJに触れた一節をご紹介します。 「ホンダジェットは独創的なリーダー、藤野氏が組織を引っ張ることで、あの小型ジェット機を創り上げた。リーダーがネジ一本まで図面をチェックして、機体に描くロゴまでこだわる。さらには、生産工場の壁の色までも、自分のコンセプトに合致させている」 「ひとつの哲学が貫かれることで、航空機はようやく完成する」 「MRJのプロジェクトは巨大な組織を動かさなければ進まない。その違いが今回の差となっている面はある。しかし、トップが替わりすぎる弊害も出始めているのではないか。」 「このプロジェクトを貫く哲学はあるのか。そのことを忘れてはいけない」 なかなか含蓄のあるお言葉でした。(水) ---------------- ■関連リンク 「所沢航空発祥記念館」 公式サイト ホンダの設計思想についてはこちら 「ホンダ、セスナに挑む 米でジェット量産へ」 (日本経済新聞・工藤正晃、グリーンズボロ=中西豊紀 2015年12月10日掲出) --------------------- 「できる!」ビジネスマンの雑学 ジャンル別 --------------------- 〇ニュースを読む 〇出来事 〇本・雑誌 〇IT関連 〇旅 〇食と料理 〇教育 |