「できる!」ビジネスマンの雑学
2017年05月17日
[394]外来植物・ナガミヒナゲシの繁殖に思う事

 最近、空き地はもとより道端やブロック塀のわずかな隙間でもよく目にするピンクがかった薄オレンジ色の可憐な花があります。

 ケシの仲間、ナガミヒナゲシという植物です。いまこの花が問題視されていることをご存知でしょうか。

驚異の繁殖で拡大 ナガミヒナゲシとは
 道端や駐車場などで最近よく見かけるオレンジ色のかれんな花。
 ナガミヒナゲシと呼ばれ、この季節に花を咲かせますが、実は外来植物で、在来の植物や作物に影響を与える可能性がある、ちょっと「やっかい」な植物なんです。いったいどんな植物なんでしょうか?
首都圏放送センター:大野桃記者 5月12日掲出)

 この花はとても繁殖力が強く、ひとつの花が1600もの種子を作り出し、ときには一株で15万粒もの種を放出するそうです。

 たしかに東京郊外にある、筆者の自宅近くの空き地でも一大群生となっています。

2017051701.jpg
※筆者の自宅近くの空き地はナガミヒナゲシがいっぱい

 このニュースを知ってからは、筆者はナガミヒナゲシの花が咲いているうちに駆除に努めています。しかし今の季節はそこいらじゅうで咲き誇っており、とうてい根絶するには至らないようです。

 「外来植物をなくして日本本来の自然の姿を取り戻そう」という提言は立派です。ただ、どの時代の自然が日本本来の姿なのでしょうか。また、外来植物はすべて日本の自然には害毒なのでしょうか。
 竹はとても繁殖力が強い外来植物ですが、駆逐せよという声は聞きません。お茶の木も中国から持ち込まれています。人の役に立つなら外来植物であっても許されるのでしょうか。

 ソメイヨシノは人工的に作り出された品種のせいか、幹周りが太りだすと自立できない木が増えています。戦後すぐに植えたソメイヨシノは、軒並み老化が始まっており倒木の危険すらあります。桜花のいっときの美しさを愛でるより、そろそろ長持ちする品種に切り替えたほうがいいのではないか。筆者はソメイヨシノを見るたびに思います。今がそのタイミングではないでしょうか。

 一時期、セイタカアワダチソウが同じように槍玉に挙げられていました。ちょっとススキに似た背の高い雑草で、秋口に穂先に黄色い花をつける北米からの外来種です。最近はあまりその姿を見なくなりました。
 ひるがえって北米では、現在のところ日本のススキが大繁殖して、セイタカアワダチソウを駆逐する勢いだそうです。立派な穂をたてたススキは、日本ではとても珍重されます。ところが秋の風流を楽しむ習慣のない米国ではただのやっかいものにすぎないようです。

 温暖化がすすむ今日、いずれ東京でも露地栽培でバナナが採れる日が来るかもしれませんが、バナナは間違いなく外来植物です。

 千年前、二千年前の日本の姿を追い求めて外来植物を禁止するなら、竹もお茶の木もソメイヨシノも撤去するほかありません。では150年前の江戸時代なら日本本来の自然の姿なのでしょうか。それとも米国文化が流入する前の昭和20年でしょうか。それではただの排他的な文化論になってしまいます。

 いったいいつが日本古来の自然なのでしょうか。このことへの答えはまだなさそうです。(水)


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