「できる!」ビジネスマンの雑学
2017年04月10日
[378]全自動衣類折りたたみ機が日本で生まれた訳

 世界で初めての全自動衣類折りたたみ機が日本の企業から発売されました。

 その名も、ランドロイド(laundroid)

世界初!洗濯物をたたんで収納する「全自動衣類折りたたみ機」発売
1台185万円から

 一般的な家庭で、人が一生のうちに洗濯物をたたみ、仕分け、運んでいる時間は計9000時間、375日にも上るという。その時間をもっと有効に使えたら―という思いに応え、世界初の「全自動衣類折りたたみ機」が発売される。セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社(東京・港区)が開発した「laundroid(ランドロイド)」。
 「ランドロイド」は、「画像解析」「人工知能」「ロボティクス(ロボット工学)」の技術を融合させた画期的なマシン。洗濯、乾燥した衣類を本体下段のトレイに投入すると、ロボットアームが1枚ずつ「つかみ」「広げ」、内蔵カメラで形状や色により種類を判別して「折りたたみ」、中段の棚に「仕分け」「収納」する。Tシャツ、バスタオルなどアイテム別のほか、家族別の収納も可能。最初に個人別に衣類を投入すれば、特徴を記憶し、登録される。
 高さ220センチ、幅87センチ、奥行き63センチで、家庭用の大型冷蔵庫よりも若干大きいサイズ感。操作は本体のほか、Wi-Fi接続したスマートフォンでもできる。
スポーツ報知・田中 俊光 2017年4月8日掲出)

 さらに、東京・表参道には折りたたみ機を体験できるカフェ「ランドロイド・カフェ」もオープンしたそうです。

全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」を体験できるカフェがオープン。
 東京・表参道に、ランドロイドの空間を演出した飲食店「laundroid cafe(ランドロイド・カフェ)」を、3月18日にオープン。店内にランドロイドのティザーモデルを設置し、ランドロイドを身近に感じられるという演出を用意するという。
家電Watch・西村 夢音 2017年3月16日掲出)

 この衣類折りたたみ機は、これまでになかったジャンルを切り開く画期的な家電品と絶賛されています。

 ランドロイド本体が衣類を画像解析して、種類ごとに最適なたたみ方をするそうです。また服の種類や持ち主ごとに仕分けしてくれる機能もあり、搭載した人工知能は使うごとに賢くなっていくとか。

     ◆

 確かに便利な家電のようですが、筆者が思うに、一部の国の人にはあまり必要がないかもしれません。

 というのも服をたたむだけではなく、もっと安いお金ですべての家事を処理してくれるお手伝いさんを雇える国が世界にはたくさんあるからです。こうした国の人たちにとって、衣類の折りたたみだけで200万円近いお金を払うことは信じがたい事かもしれません。

2017041001.jpg

 また、日本社会が持つ特殊性が、こうした商品を生み出しているとも言えます。

 以前、元NHKディレクターの方が実母の介護を記録した本を当コラムでご紹介しました。

[278]「わが母 最後のたたかい」で知る、敗戦引き揚げの真実
(2016年08月15日掲出)

 この本の中で以下のような会話がありました。母の介護のためブラジルに行く事が難しくなったNHKディレクター氏は、ブラジル人の友人にこう言います。

 「母の介護につきっきりなので、今はブラジルに行けないよ」
 ブラジル人友人:「えっ、なぜ」
 「だから私が一日中、介護に明け暮れているから」
 ブラジル人友人:「はて、介護はお母さんの問題だろう。健康なあなたがなぜ出かけられないのか」
 「・・・」
 ブラジル人友人:「なぜ介護にあなた自身が手を出すのか。家政婦にやらせれば良いではないか」

 このときディレクター氏は、実母の介護についてブラジル人の友人とは理解し合えない壁を感じたそうです。

 ブラジルのお金持ちは、家の雑事はすべて家政婦の仕事と割り切っています。奥さんも子供たちも家事や掃除などから解放され、有り余る時間を勉学に社交に専念しています。それがお金のある人にとっての普通の生活です。
 親の介護も家事のひとつにすぎませんから、家政婦にまかせっきりでも引け目を感じる事はまったくありません。

 この発想は、日本人のディレクター氏にはなかったのです。いえ、発想はしても実行はかなわないのです。
 というのも、日本社会で介護が評価される基準は、子供本人が親に対してどれだけ時間をかけ手を尽くしたか、ですから。介護を親への恩返しと思うなら、自分の手でなさなければいけないのです。
 その意識は日本では今も当然の事とされ、仕事を抱えた数多くの息子、娘たちは介護の時間が取れないことに、心理的な強迫観念に襲われています。

 そう考えると、外国人の家政婦やお手伝いさんを安く使える社会では、このたたみ機は到底生まれなかったでしょう。
 これとは逆に、他人の介助を家庭に受け入れられない日本では、機械にそれをゆだねようとしています。

 人の手を借りる事を良しとしないまま、日本社会はますます機械に依存した社会になっていくのでしょうか。(水)

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■関連リンク
ランドロイド(laundroid)
ランドロイド・カフェ

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