「できる!」ビジネスマンの雑学
2016年12月19日
[332]イプシロンと「ロケットボーイズ」

 2016年12月20日の夜、イプシロンロケット2号機が打ち上げられます。

 つい先日も日本は「こうのとり」6号機(H-IIBロケット)を打ち上げたのに、またかと思う方も多いでしょう。ところが今回のロケットは前回とは全く違うロケットなのです。

 前回のこうのとりで使用したロケットは燃料が液体でした。ところが今回打ち上げるイプシロンロケットは、固体燃料を使ったロケットなのです。

2016121901.jpg
イプシロンロケット CG
提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

「イプシロン」2号機、20日午後8時打ち上げ
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は18日、国産ロケット「イプシロン」2号機の打ち上げ時刻を、20日午後8時に決めたと発表した。

 鹿児島県肝付(きもつき)町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げる。

 イプシロンは全長26メートルの3段式ロケットで、固体燃料を使って飛行する。液体燃料を使う国産基幹ロケット「H2A」の約半分の大きさで、打ち上げに必要な地上設備や運用システムを大幅に簡素化しているのが特徴だ。JAXAは、低価格で小型衛星の打ち上げに適したロケットを開発し、世界の衛星打ち上げ市場で日本の国際競争力を高めることを狙っている。
読売オンライン 科学・IT 2016年12月18日掲出)

 この固体燃料ロケットは日本が独自に研究してきた技術でもあり、1970年に日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げたラムダロケットなどがあります。

 ところで、固体燃料ロケットを研究していたのは日本だけではありませんでした。太平洋を隔てたアメリカ大陸にも、研究者たちがいたのです。しかもまだ十代の高校生たち。

 「ロケットボーイズ」(草思社/ホーマー ヒッカム・ジュニア 著 武者圭子翻訳)は元NASAのエンジニアが描いた、ロケットの打ち上げに情熱を燃やす少年たちの自伝的小説です。

 1960年代のアメリカ。さびれた炭鉱町に暮らす少年たちは、ソ連が打ち上げたスプートニクに刺激を受けて、自分たちでもロケットを作って飛ばすことを思いつきました。

 手作りのロケットはあるときは庭を破壊し、あるときは火事を起こし、そしてあるときは何も起こらず、打ち上げ見物に集まった人々を失望させます。さて、彼らのロケットはいつになれば宇宙に届くのでしょうか。

 アメリカのロケット技術者の成長記録は、周囲の人々の理解が支えていたことがよくわかる見事なサクセスストーリーです。

 そしてもうひとつ。現在のコンピュータ技術、IT技術の発達したアメリカとはほど遠い、社会から忘れられていくアメリカの炭鉱町とそこに暮らす人々が、ちょっと切ないタッチで描かれています。

 イプシロンロケットの打ち上げを前に、もう一度この本を読みたくなりました。(水)

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