◆スポーツの祭典に招かれるということ
かけっこであれ、暗算であれ、自分が同級生よりあたまひとつ上の能力と気付いた瞬間、どんなに小さい子供でも気分がすうっと高揚するものです。ましてやオリンピック競技で才能があるとほめられると、努力を惜しまずもっと伸ばしたくなります。
その結果、国の代表としてオリンピックに出場できれば、たいがいの人はそれだけで満足してしまうでしょう。体育が苦手だった筆者なら間違いなくそうです。自国でいちばん成績が良いわけです。誰だってうれしくないはずがありません。
ところが、日本代表だけでは収まらないスケールの人たちがいます。メダル獲得どころか、世界の頂点を目指すアスリートたちです。
※イメージ写真。本文と関係はありません。
◆リオ五輪カヌー競技 メダリストの羽根田氏とは
この夏のリオ五輪カヌー競技で、日本人初のメダリストとなった羽根田氏。日本ではなじみの薄い競技ですから、彼がメダルを取ったことを覚えている方は少ないでしょう。
しかし、次に紹介するインタビューを読むと、メダリストとはこういうものかと思いを改めることになります。
<独占インタビュー1>羽根田が語るカヌー銅メダルの真実 好青年である。いや29歳の銅メダリストをつかまえて好青年とは失礼か。(中略) 「今でも、ふとした瞬間に信じられない気持ちに襲われます。ロンドン五輪が終わった頃から、何回も五輪に出てメダルを獲得するという夢を見ていました。金メダルを取った夢も、日によって、獲得するメダルの色は違っていたんですが、その度に朝起きて、『ああ夢か』と現実にかえってがっかりしていました。今も、寝る前のふとした瞬間に『今回も夢じゃないか』という気持ちに襲われることがあるんです」 (THE PAGE 2016年9月5日掲出)
羽根田氏は中学3年生の時、遠征先のヨーロッパでチェーン店のハンバーガーを頬張っていたところ、銀メダリストにこう言われました。 『それは、我々が食べる食品じゃないぞ!』 それからの羽根田選手は、ジャンクフードやお菓子を一番食べたい15歳という時期でしたが、すべて絶ったそうです。もちろんジュースや清涼飲料水も。(上記インタビューより構成)
羽根田氏はどのように備えて、どう戦って、メダルを手にしたのか。カヌーが体力勝負だけではない、精神的な戦いでもあることがよく伝わってきます。カヌー競技の核心にぐいぐいと食い込んでいく、実に読み応えのあるインタビューです。
全5回にわたる独占インタビューを、ぜひご一読ください。
◆リオ五輪をよそに ひっそりと引退した人あり
今回のリオ五輪では、もうひとつ話題の競技がありました。福原愛選手、石川佳純選手、15歳の伊藤美誠選手などが活躍した女子卓球ですね。 でも、忘れてはいませんか、女子団体は前回のロンドン五輪で、すでに銀メダルを掴んでいたことを。そして今大会、姿は見えませんでしたが、あのとき団体戦の要(かなめ)となった選手がいたこと。そう、「3人娘の長女」と呼ばれた、平野早矢香さんです。 リオ五輪逃し半年悩んだ現役引退...ミキハウス卓球部コーチ・平野早矢香さん 2012年ロンドン五輪で銀メダルを獲得した卓球女子団体の活躍は記憶に新しい。福原愛、石川佳純の若手2人を引っ張ったのが平野早矢香さん(31)。目標にしてきたリオデジャネイロ五輪の代表入りを逃し、今年3月に現役引退を発表。13年間所属したミキハウスで、コーチとして再スタートを切った。(聞き手・丸山和郎) (産経WEST・【卓球3人娘の凛々しき長女(1)】 2016年6月13日掲出)
このインタビューに驚いたのは筆者だけではないでしょう。平野さんはロンドンの銀メダルで満足せず、リオ五輪も目指していたのですね。 世間では団体戦の顔ぶれが変わったことを、世代交代と簡単に片付けるでしょうが、ご本人たちにとってはそうではなかったのです。交代したのではなく「勝ち残った者が五輪切符を手に入れた」のでした。
※イメージ写真。本文と関係はありません。
◆いろいろあるけれど やっぱり楽しみ 東京五輪
かつて、日本人がオリンピック競技を応援するのは、メダルが取れそうな男子体操か柔道しかない時代が、ながらく続きました。
その頃に比べて現在ではどうでしょう。多種多彩な競技で日本人がメダリストとして輝く時代になりました。また、今回からマイナー競技やパラリンピック競技もじっくりとWeb観戦できるようにもなりました。
NHK Rio 2016 オリンピック パラリンピック http://sports.nhk.or.jp/
いろいろと心配事はありますが、2020年の東京オリンピックが楽しみで仕方がありません。(水)
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