今年12月から、従業員50人以上の事業所に対して、「ストレスチェック」制度がスタートしました。
日本の企業には、多少のストレスは人を育てる、ストレスがあった方が仕事は楽しい、難しい仕事にはストレスはつきもの、とストレスを肯定的にとらえる企業風土がありました。
ところが近年、うつ病、過労死などが社会問題化するようになり、「ブラック企業」なる言葉を産むほど、従業員に対して過大なストレスが課せられるようになりました。
従業員ストレス検査、企業で温度差
12月から実施義務化も中小は「様子見ムード」
従業員が自身のメンタル不調を把握し、働く環境の改善につなげる「ストレスチェック」制度が12月から始まった。メンタル不調により従業員が休職、退職したり、自殺したりする例が増えていることから、労働安全衛生法が改正され、従業員50人以上の事業所に年1回の実施が義務づけられた。長時間労働やストレスの高い職場の改善につながることが期待されるが、効果的なチェックができるか、従業員が不利益な扱いを受けないかなど課題も多い。
「職場改善につながる」
制度では、「時間内に仕事が処理しきれない」「仕事内容は自分に合っている」など仕事について▽「気がはりつめている」「何をするのも面倒だ」など最近1カ月の状態について▽周囲からのサポートがあるかについて-といった質問に従業員が回答。ストレスの状態が数値化され、長時間労働やストレスが多いと「医師による面接指導が必要」と判定され、従業員に伝えられる。
(産経ニュース 2015年12月6日掲出)
この制度がどんなに活用されても、仕事のストレスがまったくなくなることはないでしょう。軽度のストレスであれば、それとどう向き合えば良いのか、従業員が対処法や心構えなどを正しく学んでおくことで、解消できる場合もあります。
また、個人の生活や趣味、関心事に時間を割くなど、仕事以外にも生きる活力を求めなければ、人は誰しも精神的に追い詰められてしまいます。
そのためにはストレスの原因となる、サービス残業や長時間労働を良しとする企業体質を改めることが求められます。
さらには、業務が過度に集中するような組織を見直したり、「仕事のできる人」に安易に仕事を回すなどの、誤ったタスク管理を常にチェックすることにも企業は留意するべきでしょう。
ストレスの程度により受診ができる制度ができたことは評価できます。しかし、企業が従業員一人ひとりに細かく配慮して、ストレス軽減につながる小さな改善を積み重ねない限り、いつまで経っても解消しない問題と言えるでしょう。(水)