先週のコラムの続きのようで恐縮ですが、子供とIT機器についてです。
アップル社共同創業者のスティーブ・ジョブズ。世界初のパーソナルコンピュータ「Apple I/II」を市販し、スマートフォンを創り出した男として有名ですね。
ところで、彼は自分の子供たちに、彼自身が産みだした iPhoneもiPadも使わせなかったのはご存じでしょうか。
スティーブ・ジョブズはなぜ自分の子どもにiPhone やiPadを使わせなかったのか
2011年に亡くなったジョブスは、テクノロジーに関して本能的な才能があったが、親としてはローテクを貫き、子どもたちの電子機器の利用を厳しく制限すべきだと固く信じていた。
「私達は、子どもたちのテクノロジー機器の利用を制限しています。」と、ジョブスは2010年、我が子のハイテク機器利用時間が増えることを心配して語った。
現代の親なら百も承知だろうが、iPhoneやiPadは子ども達にとって非常に魅力的だ。これら手のひらサイズの機器は最先端のおもちゃである。長い休暇、長いドライブの間などの親が忙しい時に、親の代わりとなって、子どもたちを喜ばせ、気晴らしをさせ、静かにさせてくれる。
しかし、こうした超便利な助っ人に感謝する前に、それらの機器が子どもたちに及ぼす潜在的な害について心配すべきなのではないか?スティーブ・ジョブズはそう考えていた。今週発表されたニューヨーク・タイムズの記事で、ジャーナリストのニック・ビルトンは、ジョブスに彼の子どもがどのくらいiPodに夢中なのかを聞いた時の返事に驚いたことを回顧する。
「子どもたちは、(iPodを)まだ使ったことがないのです。私は子どもたちのハイテク利用を制限しています。」
(ccore+|後藤健太公式ブログ 2014年9月11日)
残念ながらジョブズは、IT機器によってどんな弊害があるのか、何歳からなら使わせても良いかなど、具体的な指針は語ってはいません。
おそらく中学生くらいだった彼の子供たちは「iPodは使ったことがなく、ハイテクの利用を制限している」状態としか語っていません。
翻訳者の新美氏の解説では、ゲームやIT機器への依存は、社交性やコミュニケーション能力が損なわれ、問題解決力が身につかない危険性が指摘されています。ジョブズのIT機器への本音も、この辺りにあったのではないでしょうか。
筆者もこれには同意見ですが、では何歳からなら使っても良いのか、まだ自信を持って答えられる結論はありません。
ただ筆者が言えることは、モラルの役割を考え、人と協調して生きていく知恵を度身につけるなど、リアル社会での人生経験を積んでから、バーチャル社会にデビューして欲しいです。
そのためには、子供を持つ親にも努力が必要なようです。
ジョブズは、子供たちと食卓を囲んで、本や歴史などさまざまな話題を取り上げて、語り合っていたそうです。
アメリカの若者といえば、iPhone片手にジャンクフードを手づかみで食べて、iPhoneの画面が汚れると嘆く姿が思い浮かびます。ジョブズは我が子にはそんな大人に育って欲しくはなかったようですね。
わが子に子守り代わりにIT機器を与えるよりも、手間も時間もかかるが、教育には親子で一緒の食事や会話が大切ということでしょうか。
ジョブズには昔の悪童のイメージしかなかった筆者には驚きでしたが、ニューヨークタイムズ紙に「ローテク父さん」と揶揄されたジョブズのかっこよさが光る記事でした。(水)
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Steve Jobs Was a Low-Tech Parent
(The New York Times 2014年9月10日)