長らく軍政を敷いてきたミャンマーですが、11月8日の総選挙で、野党の国民民主連盟(NLD)が政権を勝ち取る可能性が高まっています。
ただ、NLDの党首であるアウン・サン・スー・チー氏は憲法の規定で大統領になれないため、誰が大統領を務めるのか、また国の舵取りをNDLにできるのか、さまざまな難題が待ち受けています。
スー・チー氏を待ち受ける3つの課題
【ヤンゴン=吉村英輝】ミャンマーの総選挙は、野党、国民民主連盟(NLD)が勝利する見通しとなり、政権奪取の現実味が増してきた。ただ、現政権は大統領を筆頭に元軍幹部が主要ポストを占め、国政経験がほとんどないNLDが政権を担うには、長期間対立してきた国軍とも「和解」して人材登用などで協力することが必要。大統領候補の擁立や少数民族対策など、NLDを率いるアウン・サン・スー・チー氏の眼前には問題が山積している。
(産経ニュース 2015年11月10日掲出)
ミャンマーはいくつもの少数民族を抱え、軍事政権下でも一枚岩とは言えない状態でした。現にカチン族などは武装兵力を自前で持ち、ミャンマー軍も手を出せない地域すらありました。
そんな複雑な政治情勢をざっくりとわかりやすく紹介した本があります。『ミャンマーの柳生一族』(高野秀行・著 集英社文庫)。
ミャンマー語の方言(ワ語)を解する著者と作家・船戸与一の取材旅行です。なぜミャンマーに柳生一族なのか。著者の高野氏が、軍政が続くミャンマーを、江戸時代の幕藩体制に当てはめてたとえたことに由来します。
多民族をまとめたミャンマーの国父、アウン・サン将軍を徳川家康、その娘でNLD党首のスー・チー氏を千姫、軍事政権を徳川幕府をにたとえた構図は、複雑な対立関係もスッと頭に入ってきます。
軍部の取ってきた政策を鎖国体制、対立する他民族を外様の雄藩、軍の情報部を柳生一族というわけで、日本人にこれ以上わかりやすいミャンマーのガイド本はないでしょう。
この図式に従うと、ミャンマーはいままさに、明治維新前夜です。
この本は10年前の本ですが、いまだに色あせず、新聞でも取り上げられています。
江戸幕府をほうふつ 暗躍、ミャンマーの「柳生一族」 11月10日
(産経ニュース・産経抄 2015年11月10日掲出)
さて、これからミャンマーには、どんなドラマが待ち構えているのでしょうか。ミャンマーに坂本龍馬や西郷さん、福沢諭吉は現れるのでしょうか。
『ミャンマーの柳生一族』、ぜひ一読をオススメします。(水)