「できる!」ビジネスマンの雑学
2015年11月02日
[167]日本古来のハロウィン、地蔵盆、芋の名月さん

 10月31日はハロウィンの日だったようです。ここ数年のハロウィンを見るにつけ、どうやら日本では若者の仮装乱痴気パーティと解釈されたようです。

 もともとハロウィンのイベントは、子供たちがお菓子をもらいに、地域を練り歩く行事だったと筆者は記憶します。日本にも似たような行事は古くからありました。

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 関西では「地蔵盆」、日本全般では「芋の名月さん」と呼ばれ、子供たちがお菓子をもらいに地域を歩き回るあたりは、ハロウィンそっくりです。

 地蔵盆は旧暦7月24日前後ですから、新暦の8月24日あたり、夏休みの終わり頃です。

 主に関西のみの行事である地蔵盆は、集落単位で集まった子供たちが、その地域のお地蔵様を清掃して、そこにお供えされたお菓子をみんなで食べたり遊んだりします。
 守るべきお地蔵様がない地域でもしっかりと地蔵盆は行われ、お菓子をもらうだけという「もらい得」の地域もあるそうです。

 芋の名月さんは、その名の通り、中秋の名月や後の月のころですから、新暦の9月後半から10月中の満月の夜となります。

 筆者が子供のころ体験した九州版「芋の名月さん」は、とても手の込んだ演出がありました。

 各家庭は「芋名月」の日になると、庭の植木の陰や畑などに、ふかした芋をざるに入れて隠しておきます。
 満月が出た頃、子供たちが集まり、一軒一軒訪ねては、月明かりを頼りに隠された芋を探すことになります。

 夜の庭を子供たちだけで探し回るのは、少し怖くもあり、月明かりが影を映すほど明るいことを知ったりと、ドキドキする体験でした。
 芋を見つけたあとは子供たちが玄関に揃い、「芋の名月さん、見~つけた」などとと叫びます。
 すると今度はおばあさんが出てきて、見つけたご褒美にキャンデーやチョコなどのお菓子をくれるという、まことに風流なイベントでした。

 十数軒の集落をひととおり回り終わる頃には、両手には持ちきれないお菓子とサツマイモ。
 これから一週間以上はお菓子に不自由しない生活が続くかと思うと、言葉にできないほどの幸福感にひたった思い出があります。

151102.jpg

大刀洗町役場
【いもあがったの~?】~大刀洗版ハロウィン、芋名月さん~

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 ところで、日本のハロウィンは伝統行事ではなく、商業イベントとして作られた行事です。

 日本では9月から11月まで消費者の購買意欲を刺激する行事がひとつもありません。2月のバレンタインデー、3月のホワイトデーのごとく、夏休み明けからクリスマス商戦前の期間、なんとか財布のひもを緩めさせようと、商業界のみなさんが知恵を絞ったのが、日本のハロウィンの始まりと言えるでしょう。

 筆者は20年ほど前の数年間、とある商業施設のハロウィンイベントの企画をお手伝いしていました。残念ながらパレードやイベントに振り返る人もなく、盛り上がりには欠けたままでした。

 最近になって、ハロウィンが盛り上がるのは喜ばしい限りです。しかし、公共マナーを無視したゴミの山、夜明けまでの大騒ぎ、暴行事件などがクローズアップされています。

 冒頭でも書いたとおり、ハロウィンは子供たちが主役だったはず。コスプレはコミックイベントでできます。路上で酒を飲んで騒ぐのはハロウィンではありません。今年の騒ぎでは子供たちからこどもの行事を奪うような行為にしかなっていません。
 このままハロウィンにかこつけた若者の暴走が続くようでは、いずれハロウィンそのものがなくなってしまうでしょう。新宿西口広場や秋葉原のホコ天がただの通路になってしまったように。

 ハロウィンを奪われ、さらに廃止ともなると、「子供たちにとって若者こそ老害」と言われてもおかしくありませんね。

 ハロウィンが日本の年中行事として定着できるのか、一時のバカ騒ぎとして廃(すた)れるのか、いまはその岐路にさしかかっています。

 商業イベントとして日本に持ち込まれたハロウィンですが、どうやって楽しむか、子供たちを主役にリ・ボーン(再生)できないのか、商業界もイベント業界も、そして我が物顔で大騒ぎの若者たちも、考え直す時期に来ています。

 日本古来の伝統行事が途絶えていく中、子供たちを主役にした行事が少なくなっています。
 日本のハロウィンもこどもが主役の行事として定着させて、子供たちの手に返してあげたいですね。(水)

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