このコラムでも何度か取り上げた、アメリカ人のスポーツハンティング問題。NHKでようやくニュースになりました。
人気ライオン射殺 米で規制強化求める声
アフリカ南部のジンバブエの国立公園で人気を集めていた野生のオスのライオンが、アメリカの狩猟愛好家に射殺されたことを受け、アメリカでも規制強化を求める声が上がるなど問題意識が高まっています。
(中略)
アフリカでは海外の狩猟愛好家がライオンやゾウなどの野生動物を狩猟し、毛皮などを持ち帰るスポーツハンティングが行われていますが、アメリカでは今回の事件に衝撃が広がり、セシルを射殺した愛好家やスポーツハンティングそのものへの非難の声が強まっています。
(NHK NEWS WEB 国際ニュース 2015年8月2日)
このニュースでは、アメリカでスポーツハンティングへの非難が集中して、今にも規制が始まるのかと思わせますが、現実はそうではありません。人気者だったライオン「セシル」を殺害した米国人歯科医は、ガイドには620万円も払っているから合法だと開き直っています。
[FT]ジンバブエの人気ライオン射殺 猛獣狩りに焦点
ジンバブエで、そして今や世界で最も有名なライオン「セシル」が米国人歯科医に撃たれてから40時間苦しんで死んだとき、セシルは少なくとも、それまでの13年間を自由に歩き回って過ごせただけ幸運だった。
対照的に、アフリカ南部の6000頭ものライオンは、裕福な観光客の狩りの対象となる目的で、捕獲状態に置かれて飼育されている。
(中略)
セシルに対する世間の反応が示したように、狩猟は今も感情に訴える問題だ。ライオン慈善団体のボーン・フリーは、狩りのトロフィー(剥製などの記念品)の輸入を阻止する運動に加わっている組織だ。アラブ首長国連邦(UAE)の航空会社は最近、世論の圧力に応えて、禁止措置を講じた。だが、ハンターたちは一部の議論に打ち勝っている。この7月、南アフリカ航空は激しいロビー活動の後、ライオンのトロフィーや皮の輸送禁止措置を撤回した。
(日経新聞 2015年8月3日掲出 2015年7月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 By John Aglionby in London and Katrina Manson in Nairobi, 翻訳協力 JBpress)
猛獣狩り反対を唱えるのと時を同じくして、アフリカから毛皮の持ち出しが許されるのが現実です。ロビー活動は誰がやっているのでしょうか。飛行機を使って剥製を持ち出したいのですから、アフリカ以外に住むハンターでしょう。
また、ハンターたちは絶滅の危機にある動物を保護してはいません。絶滅危惧種ほどその命の値段がつり上がるだけです。ですから、サイなど稀少動物のハンティングオークションは禁止になるどころか、これからもいっそう盛り上がっていきます。
(絶滅に向かっているサイ CG作成:筆者)
こういうハンター達がいるわけですから、野生動物の生命をお金で買うことを禁止しない限り、解決には至らないでしょう。毛皮の持ち込み禁止などより、野生動物の殺害自体を罰してほしいものです。(水)