チャンスの女神は前髪をつかめ
「チャンスの女神は通り過ぎる前に、前髪をしっかりつかめ」。
この言葉は筆者が社会人になりたての頃、親戚の叔父さんから送られた格言です。
そのおじさんの心情は、伯父さんになってしまった筆者にも今だからでしょうか、よくわかります。社会人なりたての甥っ子を見た叔父さん、そのあまりにも頼りなくぼうっとした甥っ子の姿に思わず言ってしまった、究極のアドバイスだったに違いありません。
ちなみに英語ではこういうそうです。
Seize the fortune by the forelock.
英語の教師もしていた叔父さんのことですから、おそらく話のネタはこのあたりから持って来たのでしょう。「チャンスの女神には後ろ髪はないんだ。見えたらすぐつかめ」と念を押すような言葉もいただきました。
はて、英語の格言には女神の後ろ髪には触れていませんね。しかも前髪しかない女神というのも変な話です。
forelock(前髪)で英和辞典を引いてみました。
「take time [occasion] by the forelock/意味は、時[機会]を逃さない。時の翁(オキナ) (Father Time)」は前頭部にだけ髪が生えた老人の姿で描かれたことから」(『新英和辞典』・研究社より引用)。
意外なことに女神は老人に変わってしまいました。
女神だろうと老人だろうと幸運をもたらしてくれればどちらでもいい話ですが、筆者の経験から補足するとチャンスをつかむにはそれなりの準備が必要です。
・幸運の女神が来ていることに気がつく注意力
ぼうっとしていては女神が近づいたことにも気がつかない。気付かなければつかみそこねもないので、それはそれでいいのかも、と今風の若者に言われそうですが。
・前髪をつかみとる決断力
ここぞというときにみずから手を出さないと幸運は訪れない。待つだけの姿勢ではだめだよとの戒め(いましめ)。
・一度つかんだら離さない腕力と能力
幸運の兆しが訪れたら、そのチャンスを確実にものにする能力も問われます。幸運に出会うまでの時間を実力を養う期間と考えるか、ただの待ち時間と考えるか、それによって見えてくる結果は明らか。スポーツで言えば、ピッチャーフライを落球する、フリーキックで芝生を蹴る、アイスの当たりクジを犬に食われる、のたぐいですね。
できすぎの感のある名言ですが、よくよく考えると幸運の女神に出会うにはいろんなものを用意して待ってないといけないことに気付かされます。とても深みのある格言ですね。ガンバレ、新社会人たち。
そういえば、チャンスの女神の話には叔父さんならではの続きがありました。
After the festival.
つかみそこねたら、あとのまつりってことよ。
(水)