電力4社が老朽原発5基の廃炉を経産相に報告
電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)、九州電力の瓜生道明社長、中国電力の苅田知英社長、日本原子力発電の浜田康男社長は19日、宮沢洋一経済産業相と会談。関電の美浜1、2号機(福井県)など老朽原発5基の廃炉を決めたと報告した。
(中略)
宮沢経産相は「国民の原発への信頼を回復するには安全神話と決別しないといけない。安全文化の構築が不可欠だ」と、安全対策のさらなる徹底を求めた。
(引用:SankeiBiz 2015年3月19日)
電力会社は廃炉の選択理由に費用対効果をあげていますが本当はどうなのでしょうか。稼働していた設備に重大な欠陥があったとか、不適格だなどのらく印を押されたくないから、採算性を逃げ口上にしてはいませんか。廃炉にしてしまえばこれ以上設計不良、点検ミスを追求されることはありません。もしそうだとすると、原子力施設の徹底検証を放棄することになり、技術的瑕疵が将来にわたり見落とされたままになります。 採算が合う合わないの判断で原発を再稼働させていては、いずれ危険な状況を招くことになるでしょう。
そもそもいまの日本で本当に「稼げる原発」は何基あるのでしょうか。不採算で廃炉すると言うのなら、「この原発で○○億円儲かるから再稼働する」と宣言する電力会社が出てきてほしいものです。
原発の建設に関わった方から聞いた話では、GEの設計をそのまま持ってきたのが、あの問題を起こした福島第一だったそうです。その設計とは米大陸でも自然災害の少ない内陸部の川辺に設置することを前提に設計されたモノで、それをそのまま日本に持ってきたことがそもそもの間違いだったとのこと。
福島第一はせっかくの高台をなぜ海岸近くまで掘り下げて発電所を海沿いに降ろしたのか、なぜ地下に補助電源を集めたのか。疑問だらけのライセンス契約と設計でした。
津浪対策にしても補助電源施設にしても、水没の事態に陥っても安全性を保つ設計を日本側の施工企業では用意していたそうです。
潜水艦技術ではアメリカよりはるかに先行していた日本ですから、水面下でも水密性(※1)にすぐれた設備を作る能力は間違いなくあったといえるでしょう。
しかしながら、米国GE社から仕様通りでなければ安全性の保証はできない、東電からもよけいなことはするなと言われ、日本側が用意した改良プランはすべて不採用となったそうです。いちおう仕様書と設計図面は渡したので、いまでも東電のどこかで眠っているはずですよ、とのこと。
もし福島第一原発を現地の条件に合わせて設計し直していたらどうなっていたでしょうか。
この手の話はたくさんあります。太平洋戦争直後、物資の不足する日本を見たアメリカは、中古のディーゼル機関車を持ち込んで使ってくれと鷹揚に言ったそうな。しかし、戦前から電化を進めていた国鉄ではディーゼル車両を使う場所がなく対応に苦慮したとか。(Wikipedia:「連合国軍占領下の日本 3.12 交通事情」より)
1960年代、米国が差し出したライセンスビジネスを目の前に、高度成長の波に一気に乗りたい日本政府と、自社の能力を過信し莫大な利益に目がくらんだ電力企業。拙速な政策と利益優先の企業姿勢。原発事故はこの二者が招いたと言えるかもしれませんね。
幸か不幸か航空業界には安全神話などないのです。航空機はどんなに速く飛んでも、サービスがどんなにすばらしくても、煙を吐くような機体に客は乗ってくれません。たとえ事故が発生しても「原因がわからないから想定外の事態でした」などと航空会社はいえません。事故には必ず原因があり、たとえ小さなトラブルでも原因を放置しているといずれ大事故につながることを知っているからです。
評価書、活断層否定意見に触れず 敦賀原発直下「活断層」確定
原電は敦賀2号機の安全審査を申請する方針で、破砕帯の問題は審査で白黒を付けることになる。田中委員長は25日の会合で、原電が新たに破砕帯に関する調査データを追加して審査申請した場合は「あらためて審査し、許可要件に適合しているかを判断する」と強調した。
今後は、これまで調査団に評価を任せきりにしてきた規制委の審査能力が問われることになる。
(引用:福井新聞 2015年3月26日)
永遠に飛び続ける飛行機がないように、永遠に稼ぎ続ける原発などないことに電力会社もそろそろ気がついたらどうでしょうか。
-----------------
※1 水密性=水中で水が入ってこない構造の性能のこと:旧日本海軍が開発した潜水空母「伊400型」は航空機を3機まで艦内に収納できた。戦後米国に接収され、海中からミサイル(ポラリスミサイル)を発射する戦略潜水艦へと進化を遂げたといわれる。2013年ハワイ沖で発見された「伊400型」は米軍の調査ののち秘密保持のため沈められたもの。