「できる!」ビジネスマンの雑学
2015年03月25日
[020]楽天、オーバードライブ買収。電子図書館の動き加速か。

楽天、電子図書館最大手の米社買収へ 500億円規模
 楽天は19日、電子図書館事業の最大手、米オーバードライブ(オハイオ州)を買収する方針を固めた。買収額は500億円規模で、全株式を取得し完全子会社にする。オーバードライブは世界各国の図書館向けに貸し出し用の電子書籍を提供している。楽天は自社の電子書籍配信サービス「Kobo(コボ)」と連携させ、電子書籍の販売拡大を目指す。
(引用:日本経済新聞 電子版 2015年3月19日 14:00)

 楽天やコボは聞いたことがあっても、オーバードライブ社は初めて聞く社名でした。さらに図書館ではなく電子図書館。青空文庫くらいしか知らない筆者には何のことやら状態。

 しかし、調べてみると意外におもしろそうな話でした。

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第21回東京国際ブックフェア
世界ナンバーワン電子図書館システム「OverDrive」の実力
 「出版社にとって電子図書館は、本のプロモーションの場になった」とMike Shontz氏。電子図書館とはいえ無限に借りられるわけではなく、契約によって貸出枠が決まっている。そして、借りられない場合にユーザーは、順番待ちをするか、「Buy It Now(今すぐ買う)」から購入するかを選択できる。つまり、図書館は小売の敵ではなく、販売機会を増やす心強い味方になるというのだ。

 だから、紙と電子の本は、同時に出されるのが当たり前。むしろ、電子の本が試し読みやマーケティングリサーチ、プロモーションのために使われるようになってきたため、電子の方が先に配信される場合も増えてきたという。(中略)

 出版社にとって、電子図書館から手に入れられるマーケティングデータはなくてはならない存在になりつつあるようだ。
(引用:INTERNET Watch 2014年7月8日 06:00)
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 昨年のブックフェアでもオーバードライブ社は注目されていたのですね。筆者の勉強不足でした。

 図書館のシステムと言えば、本を探すか貸し出し状況を調べる程度しか知りませんでした。しかもそのシステムが異常に重くて使えない時代が長らく続いていました。ネットにつながるようになったのも最近のこと。予約しても借りたり返したりで図書館に足を運ぶ回数は昔と変わらない。公共施設だからと多少のあきらめもありました。
 ところがオーバードライブ社のシステムなら、電子書籍をネット上で借りられそうですし、それが書籍のプロモーションにもなるなら、読者にも出版社にもうれしい進化ですね。

 図書館システムがもっと活用できる予感はありました。借りたい本が40人待ちだったり、装丁がボロボロになっている本は間違いなく面白かったりと、書店ではわからない本の人気バロメーターが図書館にはありました。
 古本も負けてはいません。筆者は以前、『鮭 サラの一生』(至誠堂新書:H.ウイリアムスン 海保真夫訳)という古本を古書市でようやく手に入れましたが、末尾に前の持ち主が書き込んだ熱い推薦文がありました。前オーナーは黙って手放すことができなかったんでしょうね。推薦文付きのまま私も次の方にリリースしました。これらをシステムに取り入れて、出版界で活用できるようになれば、出版界はもっと活性化するかもしれません。

 本を借りること、本を買うこと。経済活動としてはまったく違うように見えますが、そうでもない。(絶版や在庫不足で)買えないから借りる。(貸出順番待ちで)借りられないから買う。読者が借りると買うをもっと気軽に行ったり来たりできる水路があればいいのにと思います。

 楽天がこのシステムとスタッフをどう活かすのか。まだわかりませんが、動きの少なかった日本の電子書籍業界に大きな波がやってきそうです。
(水)

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