このような風潮から現場を監督する管理職、とくに課長職にそのしわ寄せがくるものと思われる。つまり売上が低迷する経済状況の中で業績の維持・向上を求めながらも、部下の労働時間の減少も求められるということである。従来は効率のよい仕事術という自己啓発(例:お先に失礼する仕事術)やライフタイム・バランスとして取り上げられたテーマであったが、いよいよマネジメントのテーマとしてより強く意識される問題となってきた。ただし、ここで注意したいのは、それでも残業を求めなければならない経済状況であるということである。これによる課長自身のサービス残業の増大や残業を要求する場面も多々発生するという状況にどう対処するかということだ。そんな中で本書は「課長の割り切り方」も示唆する内容とする。
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第1章
「残業ゼロ革命」──そのとき課長はどうするか
1 会議室を撤去しろ! 残業会議はさせない!
2 時間あたりの生産性を数値化する会社
3 ペナルティは公然と課長に
4 残業を段階的にカットしていった会社
5 残業削減が実施された。しかし製造現場では……
6 「残業ゼロ運動」への理解が得られなかった課長はどうしたか?
7 残業の警告と強制終了をするソフトを導入
8 パソコンが残業をする「残業処理用ロボット・ソフト」
9 まずは「経営者と社員のビジョンの一致」を根気強く進める
第2章
こんな会社は成果も上がらず残業もなくならない
1 トップもトップなら課長も……最悪の企業風土
2 時間にルーズな課長たち
3 経営ビジョンが不明確でメリハリのない組織
4 「課長の閉店」を待つ職場
5 「ダラダラ残業」が散見する組織
6 マネジメントと残業とは本来無関係なはずが……
7 部下の能力と資質を見分けることのできない課長
8 「仕事のできない部下」が一生懸命にする残業
9 もうひとつの「残業の被害者」たちの存在
10 疲労困ぱい……しかし誰も帰らない会社
11 サービス残業が仕事に組み込まれている会社
第3章
残業する部下、しない部下
1 残業させない欧米企業
2 残業させざるを得ない日本企業
3 残業の断り方がうまい欧米人
4 残業の断り方を知らない日本人
5 定時で帰る後ろめたさに負けて「居残りする」部下
6 早く帰る「整合性」がないから「帰宅待機」をする
7 仲間意識から依存心へと発展する非効率
8 競争意識が時間競争・残業増加になりやすい
第4章
部下の「仕事脳力」を高める
1 部下の「仕事脳力」を見抜く
2 ポジティブに本気で「意識」「思考」を変える
3 「時間を創り出す喜び」を教える
4 「家へ帰ってもやることがない」症候群を変える
5 間違った「リーダーシップの呪縛」を解
第5章
ムダな残業を撲滅する改善ノウハウ
1 「ジョアン・カニー」の『4つの尺度』を「残業減らし」に活用する
2 「ポカ休」「チョコ停」「バグ休み」を防ぐ
3 莫大な時間と経費のロスを生む
4 課長の仕事は次元が違うが
5 内規で残業システムを「つくらない」という究極の選択
6 残業をきちんと「夜の部」に組み込んでいる
7 意外と効果的な「一緒に帰ろうよ・声かけ」運動
8 「情報の共有+情報の質」より大事なもの
9 情報の理解度と残業との悪循環に挑んでいる会社
第6章
それでも削減できない残業にどう対処するか
1 残業を必要悪とした「ストレッチ戦略」とは?
2 残業の功罪を「仕分け」する
3 残業するなら必ず成果を出す
4 「いざというときに、いい残業をする」部下を育てる
5 残業削減に対する抵抗勢力を動かす
6 「残業報告書」がしっかりしている会社
7 トップを活用しても依存するな