「P2P」という単語を耳にしたことはあるだろうか。
「P2P」とは、「Pole to Pole 2000」。
世界中から選抜された8人の若者が、北極から南極までスキーや自転車など人力だけで踏破する、2000年に行われた冒険プロジェクトだ。この挑戦に日本人として唯一参加した当時23歳の青年が、石川直樹氏である。石川氏は翌2001年にチョモランマ登頂に成功し、世界最年少(当時)で七大陸最高峰登頂を達成。2008年に『最後の冒険家』で開高健ノンフィクション賞を受賞するなど、作家としても頭角を現している新進気鋭の写真家だ。
今回私が紹介するのは、そんな石川氏のデビュー作
『この地球(ほし)を受け継ぐ者へ―地球縦断プロジェクトP2P」全記録』である。
「P2P」に参加した石川氏は、その旅の過程を日記に綴り続けた。国境を越えた8人の個性豊かな男女が一つ屋根の下・・・ときにテントの下で長い時間を過ごしたのだから、当然そこには衝突があり、友情が芽生え、ときに甘酸っぱいやりとりが交わされる。
旅が進むにつれ石川青年が成長していく様子は微笑ましくもあり、23歳という年齢で「P2P」という一大プロジェクトに参加できたその経験が羨ましくもある。
沢木耕太郎著『深夜特急』を初めて読んだときに感じた焦燥感を、私に思い起こさせるのだ。ほんとうに、このままの自分でいいのか、と。
残念ながら現在、この作品は新刊書店ではなかなか入手しづらい。しかし石川氏の他の著作に触れると、この「P2P」での経験が根底に流れているのを感じる時がある。もし「石川直樹」に興味が湧いたなら、ぜひ手に入れてみてほしい一冊だ。
紀伊國屋書店 前橋店
平野高丸
『この地球(ほし)を受け継ぐ者へ
―地球縦断プロジェクト「P2P」全記録 』
著者:石川直樹
出版社:講談社
ISBN: 4062566370