早いもので、今年もあと少し。
皆様方にも良いこと・悪いこと・幸せなこと・そうでないこと。・・・きっと様々なことがあったかと思います。
その中のほとんどの事が、きっと"忘れてもよい"か"忘れてしまうもの"
(はたまた人によっては"忘れたいもの"なのかもしれません)に分類されると思います。
2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災・・・私たちにとって、この震災は一生涯忘れることは出来ないでしょうし、決して忘れてはならないものになりました。
もしかしたら、忘れようと思えば思う程、彼の地・出来事への "想い"は強くなるのかもしれません。
最近出刊された、石井光太さん著作の「遺体」。
ここに収められたルポタージュには、震災発生当初から、現在をもってしても我々に報道されて来なかった、出来なかった"死の現実(リアル)"がまるでナイフの様な鋭さで綴られています。"死""希望""再生"・・・実際にその場にいなかった私たちが簡単には語れない物事。個人的な感想ですが、震災後、あまりにも簡単にこれらの言葉を見聞きしてきた様に思います。そしてあたかも、何もかもを知っているかのようになってしまい・・・。
この本は"死"の後の"遺体"と、その"遺体"に直面されてきた方々を中心に描かれています。きっと生前からそれぞれがたくさんの大切なものや思い出を作り、何かを、誰かに残してきた体。そこには「現実」があります。残酷と思われる方も、たくさんいらっしゃると思います。でも、誰もがいつかは遺体となります。それもまた「現実」です。
だからこそ、誰もがきっと、何かをこの本から汲み取れるはず。そう信じたい。
現在だからこそ私たちは、「現実」と向き合う必要があるのかもしれません。
読み終えた時、何なのかは漠然としていて至極曖昧だけれど、心のどこかをきっと
"もう一歩だけ前に"進ませてくれる。何よりも、言葉に出来ない大切な"何か"を改めて学ばせてもらえる。そんな1冊。
重要なのは、この本が物語ではない日常の断片ということ。日常の延長に未来があるのなら、断片にも目を向けるべきだと私は思っています。
注)今回はオススメ本としてではなく、推薦本として、コメントさせていただきました。
ブックファーストアトレ吉祥寺店
岩崎 高史
書名:『遺体』
著者:石井 光太(イシイ コウタ)
出版社:新潮社
ISBN:9784103054535
本体価格:1575円