つい先日、角川文庫の新刊として、『宇宙のみなしご』が発売されました。
と言っても、私がこのお話を初めて読んだのは、実は主人公の陽子と同じ、中学生の頃のことです。たぶん、学校の図書館で借りて読んでいたのだと思います。
それから時は流れて今、大人になり(登場人物でいくと、陽子の元担任教師のすみれちゃんにいちばん年齢が近そうです)、働いている書店で再びこの本に出会い、紹介できる日が来るとは!
そんなに月日が経ったのか、と、個人的にとても感慨深いです。そして、愛され続けている作品だということも今更ながら感じました。
さて、あまりの懐かしさに妙にどきどきしながらページをめくると、やっぱり私も大人になったもので、最初に読んだ頃とはすこしちがって、ああ中学生って子どもなんだなあ、一生懸命だなあ、と、愛おしくさえ思いながら、もっと言えば、可愛いもんだわ~くらいのちょっと上から目線で読み進めていました。
が、しかし。
ぐっと深いところに、響きました。子どものときとはまたちがうところに、ぐっと。かつて何度も読んでいて、展開も知っていたはずなのに!
驚いたのと同時に、この良さがわかる大人になれて、よかったと思いました。
特に、じっくり読んでいって、たどり着くラストシーン。衝撃的な結末とか感動の大団円とかそういう仕掛けがあるわけでもない、最後の場面。
内容はしっかりしていますが、もとが児童書なだけあってするする読めるので、手にとってみてほしいです。自分の中心を見失いそうなときや、自分がひとりぼっちかもしれないと思うときには、大事なことを思い出させてくれると思います。
年齢性別問わず、ぐっと響くはず。おすすめです!
ささおき書店
藤原千代
書名 :宇宙のみなしご
著者 :森 絵都
出版社 : 角川書店(角川グループパブリッシング)
ISBN :9784043941087
税込価格 :460円