どうにもならないことでクヨクヨ悩んでしまったとき、
理由もないのになんだか気分が落ち込んでしまったとき、
よく思い出す4つの約束があります。
一つ、島で手にはいるもので、くらして行く
二つ、できない相談をいわないこと
三つ、規則正しい生活をすること
四つ、愉快な生活を心がけること
さしあたって、この四つを、かたくまもろう
これは、明治の日本男児の身に実際に起こったノンフィクション、「無人島に生きる十六人」の船長が無人島での暮らしを始めるにあたって、十五人に約束した4か条です。
「遭難」という生きるか死ぬかの窮地でも、心を強くもち生き抜くために作られたこの4か条は、心が弱った時の私にもとてもいいお薬になってくれています。
「今あるものに感謝し満足し不平を言わず、つらい時こそいつも通りに規則正しく愉快に暮らすように心掛けよう」と。
「無人島の十六人」は、太平洋上で座礁し、小さな無人島に漂着した十五人を束ねた船長の経験譚に
深い感銘を受けた教え子が、後世に残すべく記したお話です。
ぐるりと海に囲まれた国なのに、「十五少年漂流記」「ロビンソンクルーソー」のような魅力的な海の物語に
恵まれていない日本の子ども達へ向けて書かれているので、とても優しくてどこか可愛らしさもあるお話に
なっています。
海亀のお腹に貯まる真水を得るための「海亀牧場」、海綿をつかって天日でつくる「塩づくり」など、魅力的
なエピソードが盛りだくさん。実話ですし、遭難という危機的状況ですので困難な場面もたくさんあります
が、生きるための工夫、十六人の心持ちへの感動がそれを上回り、すがすがしい読み心地です。何より
誰も死なない、不幸にならないところが素晴らしい!明治日本の海の男のたくましさ、精神の強さに感じ
入ります。
もっとも好きなシーンは、生きる糧にするためにアザラシには近づくなという船長命令を破ってしまった
国後さんが謝るところ。
「規律を破って申し訳ありません」
「これからは気をつけるのだぞ。だが、せっかく友達になったのだ。アザラシとはいつまでもなかよくしろよ。」
ドキドキハラハラの冒険譚と日本男児の強さと、生きていることの幸せを味わえる優しい優しいお話です。
まだ出会っていない方は是非読んでみてください。
5月病もきっと吹き飛びます。
有隣堂 ヨドバシAKIBA店
門脇 順子
書名 : 無人島に生きる十六人
監修 : 須川邦彦
出版社 :新潮社
本体価格 : 420円
ISBN : 978-4101103211