先日、将棋の対局で終盤になるとたびたび席を外したことをきっかけに、あるプロ棋士が重要なタイトル戦を出場停止となりました。 このタイトル戦は優勝すれば4000万円以上、負けても1500万円ほどの賞金だそうです。 問題となった棋士は、席を外したスキにスマホの将棋ソフトに次の一手を考えさせていたのではないか、と疑われたのです。 将棋ソフトの不正使用はないというご本人の主張もあり、真相解明はひとまずおくとしても、将棋ソフト使用というAI疑惑により出場資格は別の棋士に代えられてしまいました。 この一連の騒動により、AIを使った将棋ソフトウェアの能力は、いまやプロ棋士が頼るほど高度であることが明らかになったのです。 しかもスマートフォンで動作するわけですから、ちょっとしたトイレ休憩やタバコ休憩でも使うことができます。 たとえて言うなら、大学入試の会場に参考書をそろえた休憩室があって、試験中に自由に休憩して良いと言われながら、休憩するとカンニングしたはずだと疑われるようなもので、学力試験なのに人間性を試されているようで、なんだか釈然としません。 プロ棋士という職業がAIソフトに置き換え可能な現実があるわけですから、こうした不正を排除したいのであれば、大会運営側でそれができないよう、事前にルール作りしておくべきだったのではないでしょうか。 この騒動はあと味の悪い結果となりましたが、「プロ棋士という職業人がAIによって仕事をなくした日本で初めてのケース」といえるでしょう。 囲碁の世界では、今年3月に「AlphaGo」という囲碁AIソフトウェアがプロ棋士・李世ドル九段に4勝1敗と圧勝しています。 そして「AlphaGo」は、人間以外の存在としては初めて、囲碁の世界ランキングで堂々の4位にランクインしました。 「人間と人工知能、どちらが上ということはまだ私には言えません」――世界ランク3位・井山棋聖、AlphaGo勝ち越しは「大変なこと」 (ITmediaニュース 2016年03月15日掲出) ついに日本でも、11月20日に行われた「第2回囲碁電王戦」で、囲碁ソフト「DeepZenGO」が趙治勲名誉名人に初めての勝利を収めました。 日本最強の囲碁ソフト「DeepZenGO」、趙治勲名誉名人を破る 電王戦第2局 囲碁のプロ棋士とコンピュータソフトが対局する「第2回囲碁電王戦」の第2局が11月20日に行われ、囲碁ソフト「DeepZenGO」が趙治勲名誉名人に初勝利した。日本製の囲碁ソフトが公の場で、ハンディキャップなしにプロ棋士に勝利したのは初めて。19日の第1局は趙名人が勝利していた。 (ITmediaニュース 2016年11月20日掲出) このままAIが発展していくと、チェス、囲碁、将棋など頭脳明晰な天才が集まる職業が、真っ先にAIに奪われてしまうのでしょうか。 とはいえ人間にも大きな可能性があります。それは、将棋のAIには絶対に打てない一手を、人間の棋士なら打つことができることです。 将棋の郷田王将が「二歩」 公開対局で痛恨の禁じ手 将棋の郷田真隆王将(45)が3日、札幌市での佐藤天彦名人(28)との公式戦で禁じ手である「二歩」を指し、反則負けとなった。タイトル保持者の反則負けは極めて異例。(中略) 郷田王将は王位、棋王、棋聖などのタイトルを獲得した経験があり、今年1~3月の王将戦七番勝負では羽生善治三冠(45)の挑戦を退けてタイトル初防衛を果たした。今月1日には、結婚したことを発表した。 (朝日新聞デジタル 2016年9月3日掲出) もしAIが二歩を打てば、不良プログラムとして誰も使ってはくれないでしょうし、開発者はこのAIプログラムを抹殺するかもしれません。 もちろん、二歩を打たない最強のAIプログラムが登場したとしても、この棋士のように結婚という詰めにはたどり着けないのではないでしょうか。(水) --------------------- 「できる!」ビジネスマンの雑学 ジャンル別 --------------------- 〇ニュースを読む 〇出来事 〇本・雑誌 〇IT関連 〇旅 〇食と料理 〇教育 |
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