突然ですが、肥前狛犬(ひぜんこまいぬ)をご存じでしょうか。狛犬ですから生きた犬ではありません。神社の入り口に対(つい)になって鎮座している、犬形をした石像のことです。 ただ、この肥前狛犬、少々形が変わっています。何というか、愛らしくはあるのですが、ちっとも狛犬には見えません。ましてや犬にすら見えません。しいて言えば狛犬に似せた、猫かなにか。 漫画家の諸星大二郎先生のマンガに出てきそうな、「ブサかわいい」としか言いようのない珍しい彫像です。 肥前と地名が付くことからもわかるように、主に佐賀県西部の神社にまつられているようです。 いままでまったく知名度がなかった肥前狛犬ですが、最近にわかに話題になりました。 盗難の「肥前狛犬」米国で発見、帰還 小城市内で盗まれた佐賀県独自の石仏「肥前狛犬(こまいぬ)」が米国ニューヨークで見つかり、県内に返還されたことが26日、分かった。佐賀署が別の石仏盗難事件の余罪捜査で転売先をたどり、日本から電話で所有者に事情を説明したところ、国際配送で戻ってきた。行方を案じていた文化団体は喜び、狛犬の表情も心なしか、安堵(あんど)がにじんでいる。 転売が繰り返されており、佐賀署員は足取りを追うようにネット上の取引を丹念にたどり、日本から約1万キロ離れた米国東部のニューヨークに渡った事実を突き止めた。 所有者に電話で連絡すると、盗難品だったことは知らず、返還を了承した。現地では「HIZEN KOMAINU(肥前狛犬)」の出品名でギャラリーに飾られ、1800ドル(約18万円)で販売されていた。 肥前狛犬は、安土桃山時代から江戸時代中期にかけて佐賀で造られ、神社などに設置された。 (佐賀新聞LIVE 2016年6月27日掲出) (故郷に戻り「心なしか安堵する肥前狛犬」:筆者模写) 狛犬を盗んだ上に売りさばくとは、罰当たりもいいところです。盗人は住民が代々守ってきた石像文化の価値などわかってはいません。一円でもお金になればいいだけのこと。 犯人たちは窃盗という犯罪に加えて、地域の伝統や文化の破壊という二重の罪を犯していることを自覚するべきです。 肥前狛犬の盗難に直面した地域では、「県内全ての狛犬の戸籍を早急に作成し、盗まれた場合の対策を講じなければ」(※1)と語っています。「戸籍」と言うところに、限りない愛情を感じますね。 願わくば、「盗まれた」後の対策ではなく、「盗まれない対策」を講じてほしいものです。 石像は生まれた風景に溶け込む姿に本来の価値があるはずですが、これからは頑丈な鉄柵に納めて守るしかないのかもしれません。 (木立にたたずむ祠・宮城県大崎市内) 残念なことですが、後世に伝えるためには仕方のない時代になりました。(水) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ※1 佐賀新聞LIVE 「県内神社から盗難「肥前狛犬」ネット競売に」 2016年5月2日より --------------------- 「できる!」ビジネスマンの雑学 ジャンル別 --------------------- 〇ニュースを読む 〇出来事 〇本・雑誌 〇IT関連 〇旅 〇食と料理 〇教育 |
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