「水兵、リーベ、ぼくの船・・・(H, He, Li, Be, B, C, N, O, F, Ne...)」 学生時代、化学の授業でこの呪文を暗唱した方も多いことでしょう。周期表にある元素の順番を覚えるおまじないですね。 このたび日本が、いえアジア圏にある国が初めて発見した新元素が、周期表に載ることになりました。 その名も「ニホニウム」、アルファベット表記は「nihonium」、元素記号案は「Nh」。日本の国名にちなんだ命名です。新元素はニホニウム 日本初、理研チーム命名 113番、周期表に記載 年末にも正式決定 理化学研究所のチームが発見し、日本で初めて命名権を獲得した原子番号113番の新元素の名称案は「ニホニウム」であることが明らかになった。元素記号案は「Nh」。元素名を決める国際純正・応用化学連合が8日夜、発表した。既に内部審査で承認しており、年内にも決定する。(産経ニュース 2016年6月8日掲出) このニホニウム、私たちの生活でどんな役に立つのか、それはまだ未知数としか言いようがありません。というのも、ニホニウムを作ることは、そう簡単なことではないからです。 「われわれが発見したものは寿命が1千分の2秒で、600日で3個しか作れない。」(森田教授談・※1) ニホニウムを製造する実験装置の総工費は73億円、実験経費は9年間で3億円もかかっています。一時はなかなか成果が上がらず、継続打ち切りを告げられたそのとき・・・。ドンペリをたたき割り実験続行「魔の7年間」乗り越え、日本が露米に逆転勝利した真相とは 大みそか(2015年12月31日 ※2)の午前5時。理化学研究所の森田浩介グループディレクター(58)は、新元素を認定する国際機関の関係者から電話でたたき起こされた。「113番元素の認定に関するメールが届きますよ」。眠い目をこすりながら半信半疑でパソコンを開いた。 「命名権をあなたに与える。おめでとう!」 (中略)113番は理研と、ロシアのドブナ合同原子核研究所を拠点とする露米チームがそれぞれ発見を主張し、10年を超える争いが続いていた。 科学の世界には、一番手だけに栄誉が与えられる厳しいおきてがある。そう話すノーベル賞受賞者の野依氏は「ノーベル賞は10年で忘れられるが、元素の命名は永久に忘れられることはない。素晴らしい金メダルだ」と最大級の賛辞を贈る。(産経ニュース【新元素113番の輝き(上)】 2016年1月21日掲出) 周期表に元素を載せるということは、ノーベル賞に勝るとも劣らない国家の威信をかけた大事業、科学者の本気の戦いだったのですね。 過去には日本の基礎研究は予算が少なく、新元素を予想したり発見したりしながらも、機材不足のため追認できずに他国に先を越されることがありました。また、戦後すぐには、加速器を米軍に破壊されたため、研究の再スタートが立ち遅れた事情もあります。 森田教授の発言で印象に残るのは、わたしが発見したとは一言もおっしゃっていないことです。つねに「われわれ」の成果と強調されています。チームの結束の強さ、10年を超す苦難の時期を48人の研究者で乗り切ったことの証(あかし)でもある、重みのある言葉ですね。 日本の子供達が「水兵、リーベ、僕の船・・・ニホニウム」まで暗唱する日がやってくるのは、そう遠いことではないでしょう。(水)-------------------※1 産経ニュース 「水兵、リーベ...ニホニウム! 新元素命名、森田浩介氏の会見詳報 「周期表の一席、大きな意義」」(2016年6月9日掲出)より引用 http://www.sankei.com/life/news/160609/lif1606090025-n2.html※2 日付は筆者追加
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