研究者向けに限られた需要と思って開発したアプリが、意外な人気を呼んでいます。 スマートフォン用に公開された変体仮名(くずし字)を学習する無料アプリ「くずし字学習支援アプリ KuLA」が、教育アプリランキングで一位を獲得。年内には3万回ものダウンロードを記録するのではないかと予想されています。※「KuLA」スタート画面:iTunes Previewより刀剣女子、歴女...「くずし字」学習アプリと解読システム、開発者も仰天の意外な需要 現代、日本人でも江戸時代以前に書かれた「変体仮名」、「くずし字」を読める人は少ない。一説には、読める人が1万人を割ったともいわれている。文字とは、その国の文化歴史をひもとき、継承していくための大きな鍵、その読み手の喪失は大きな危機だ。そこで最近、スマートフォンを使ってゲーム感覚で学べるアプリやくずし字を解読するシステムが登場、話題となっている。それぞれ、あくまで学習の補助だったり、まだまだ精度に改善の余地があったりするが、専門家以外にも意外な需要があることが判明した...。(安田奈緒美)(産経WEST【関西の議論】 2016年6月9日掲出) 新聞記事によると、開発したのは大阪大学大学院文学研究科。明治以前の古文書を読む必要のある、文学・歴史の研究者や過去に記録された自然現象を調べたい理系研究者が、古文書の読み方を学ぶ目的で開発されました。ですからお遊びではなく、読解力を向上させるための真面目なアプリのはずです。 ではなぜ、これほどの需要が発生したのか。なんとダウンロードした人の3分の1が、日本刀を擬人化したオンラインゲーム「刀剣乱舞」のユーザー、いわゆる「刀剣女子」だったのです。(刀剣乱舞については、過去のコラムで取り上げました。)[227]日本発のIoT技術・・・刀剣女子の世界。http://www.asuka-g.co.jp/column/1604/007854.html 筆者も大学時代に、万葉集に始まり、源氏物語、近松、芭蕉、西鶴などを写本や当時木版刷りされた和書(もちろん複写印刷した本)で学んでいました。 これが目的で日本文学を専攻したので、充実した大学生活でしたが、社会人になって古文書を読む知識が役立ったことは、予想した通り一度もありませんでした。 そば屋の店名や高級和食店のメニューを読めるのは便利ですが、それ以外の活用は今もありません。※方丈記の一節・Google Playより 古文書などプロにまかせて、現代語訳付きで書籍化されるのを待てばいいという声もあります。しかし古文書が書籍化されるには、相当の需要がなければ出版に至りませんし、今もその数は限られています。 江戸時代までの古文書は、全国に膨大な数が眠っています。地方では自宅の蔵に大量に保管したままという話もよく耳にします。これは世界的にもまれな存在です。たとえば、18世紀建国のアメリカには自国の古文書そのものがほとんどありません。私たちは長い歴史を受け継いだ結果として、現代に生きているのです。 日本全国に眠る古文書達。今のうちに解読して、後世に末永く伝えることができればいいですね。(水)------------------■参考リンクカレントアウェアネス・ポータル(国立国会図書館)『くずし字学習支援アプリ「KuLA」が公開開始』(2016年2月18日)「くずし字学習支援アプリKuLA」(iOS版/iTunes)https://itunes.apple.com/jp/app/kuzushi-zi-xue-xi-zhi-yuanapurikula/id1076911000?l=en&mt=8「くずし字学習支援アプリKuLA」(Android版/Google Play)https://play.google.com/store/apps/details?id=yuta.hashimoto.kula&hl=ja
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