世の中には珍妙なサービスの店が存在します。そして、失礼ながら、意外にも長く続いたりします。
筆者が知っている新宿のステーキハウスは、おつまみに殻付き落花生が出てきますが、そのカラは回収してくれません。床に投げ捨てる約束です。床は踏みつぶしたカラが厚く層をなし、歩くといつもフカフカ。
店主は時折、コップの水をそのフカフカにぶちまけます。床がしっとりするそうです。
吉祥寺のある呑み屋では、壁一面にメニューが貼り出されていますが、オーダーしても聞き流されます。ママがその日に作れるのは、いつもひとつだけ。しかもメニューには・・・出てもいない品。
常連はつまみを買ってくるか、食材を持ち込んだ人がみんなの分も調理するかして、助け合って飲むのが当たり前になっています。
これって外で飲む「家飲み」かと思うでしょうが、飲み代はしっかり取られてますから。
タイ北部、ランパーン。川に面した広いテラス付きの瀟洒なホテルでは、大きなラブラドールが二頭で出迎えてくれます。ただし、ワンちゃんたちは気の済むまで客をなめ回すので、チェックインにかなり時間がかかります。
一頭は見習い犬らしく激突しての歓待で、おなかで受け止めたヨメが、ウッと唸っていました。
◇
さて、変わったサービスのカフェが東京・足立区にオープンしたそうです。いったい、どんなサービスなのでしょうか。
お客様は「ぬいぐるみ」...専用カフェが話題に
ぬいぐるみがぬいぐるみをもてなす?――。
この夏、東京都足立区に誕生したぬいぐるみ専用のカフェが話題を集めている。いったい、どんな人が利用するのかと思いきや、1月まで予約は埋まり、海外からも問い合わせが相次いでいるという。
(中略)
「やわらかん'S cafe」という名のこのカフェでは、店員役のヒラメやサルのぬいぐるみが、依頼主から預かったぬいぐるみを3日間にわたってもてなす。オムライスを食べたり、カードゲームで遊んだり、夜はベッドで布団にもぐったり......。
(中略)
基本料金は4600円(税抜き)。予約は受け付け開始から10分ほどで埋まる。利用者は30~40歳代の女性が主で、日本だけでなく、アメリカや香港など海外からも「利用したい」という問い合わせが10件ほどあったという。
(ヨミウリオンライン・社会 2015年11月28日掲出)
ぬいぐるみを世界旅行させるサービスもありましたね。ぬいぐるみに旅をさせたいと思う人なら、喫茶店に3日間も「宿泊」して4600円は安い、と感じるでしょう。
一方で、ぬいぐるみがどんなサービスを受けようと、しょせんぬいぐるみ。楽しくも何ともないと言う人もいます。そんな人には、ぬいぐるみカフェなど無縁の存在でしょう。
◇
ぬいぐるみの話題のついでに、告白しましょう。
筆者はおじさんですが、マイぬいぐるみを持っています。
その昔、親友のMくんが開発したゲームのキャラクターぬいぐるみを、発売記念に彼から頂戴しました。いまも、わが家の玄関を飾るそいつは、マンガ家の桜玉吉さんデザイン、その名は「ピキーニャ」。非売品。
だ、だから、少しも恥ずかしくはないぞ。
では、「ピキーニャ」をぬいぐるみカフェに連れて行きたいかというと・・・。
少し考えさせてください。(水)
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