改正派遣法が先月9月11日に成立、同月30日に施行されました。改正の要点をまとめると次の通りです。
・同じ職場での派遣契約は3年を上限とする
・実態にそぐわなくなった「専門26業務」区分を廃止し、雇用期限を設ける
・すべての派遣事業を許可制にする
・派遣会社は派遣労働者の教育訓練やコンサルティングを義務づけ
・派遣会社は派遣労働者の雇用安定措置を義務づけ
これだけでは派遣労働者を助ける改正かどうか、わかりづらくなかなか議論が深まらないようです。
新聞社や各ニュースサイトから、改正派遣法の解説と今後の予想が出てきました。
ヨミウリ・オンラインでは、これまでの派遣法の歴史と今回の改正のポイントをまとめてあります。基本的な認識を得たい人には、一読をおすすめします。
改正派遣法成立 派遣労働者にとって有利?不利?
労使間で評価に大きな乖離
厚生労働省の資料によれば、今回の派遣法改正は、2012年における改正の付帯決議を踏まえて、派遣労働者の一層の雇用の安定、保護等を図るために、全ての労働者派遣事業を許可制にしました。それとともに、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続を推進し、派遣先の事業所等ごとの派遣期間制限を設ける措置を講ずるものとされています。
今回の改正を受けて、塩崎厚生労働相は11日の閣議後の記者会見の場で、「正社員になりたい方にはその可能性を高め、派遣であえて働こうとする方々には処遇を改善しやすいようにするための法律だ」と発言しています。経済界も今回の法改正を歓迎しており、経団連の榊原会長は、「経済界にも派遣業界にも、派遣労働者にもプラスの多い改正だ」と述べました。
弁護士・蒲俊郎
(ヨミウリ・オンライン・ライフ>趣味・教養>大人の法律事件簿 2015年9月23日掲出)
実際にIT業界で働く派遣労働者には、今回の改正がどのように影響するのでしょうか。業界関係者へのインタビューが参考になります。
「派遣切り」の悪夢再び?――改正労働者派遣法が派遣エンジニアに与える影響とは
改正労働者派遣法が9月11日に成立し、30日より施行された。「派遣期間の上限3年」「特定派遣の廃止」など、派遣エンジニアにとって影響が大きい本改正のポイントを、エンジニア派遣を行っているビーブレイクシステムズの高橋氏に伺った。
(ITmedia [宮田健, 鈴木麻紀,@IT] 2015年10月6日)
派遣業界とは10年以上にわたり、おつきあいしてきた筆者の私見ですが、派遣労働者への教育が決定的に不足していると思います。
新卒で正規雇用がかなわなかった若者が派遣登録する場合、アピールポイントは「若さ」しかありません。
若さだけを求める職場に派遣されてしまうと、若者がスキルを身につける環境や機会に出会うことは難しくなります。
技能や知識を吸収するべき貴重な20代を、誰でもできる仕事で費やしてしまうのです。
若者は「技術がないから、常識が足りないから、派遣先で失敗されると困るから」スキルが必要な仕事は頼めない。こうしたもっともらしい理由で、派遣業務が若者を軽視してきたのは否めない事実です。
派遣業界の持つこうした考え方は、目先の利益確保に役立ちはしても、日本の社会にとっては大きな損失です。
今回の派遣改正法では、派遣業者に教育訓練や就職のコンサルティングが義務づけられました。若者がスキルを身につけ、よりよい職場にステップアップが図れるよう、派遣業界で教育カリキュラムを整備されることを期待します。(水)
ニュースを読む一覧へ |