去る8月17日から、タイの首都バンコクで立て続けに発生したバンコク連続爆弾事件。20人の方が亡くなり、日本人を含む128人もの重軽傷者が出てしまいました。ほほえみの国で起きた痛ましい事件でした。
実はこの事件の捜査に、日本人のベテラン元警察官の技術と経験が活かされていることは、日本ではほとんど報道されていません。
日本の捜査手法を伝授したのが現在、タイ警察の現役警察大佐(日本でいえば警視正に相当。県警では部長、警察署では署長の地位)である戸島 国雄氏です。
戸島氏は、日本の警視庁では鑑識捜査官を長年勤め、モンタージュ写真を使っていた犯人捜査に、初めて似顔絵を導入した方としても有名です。
警視庁を定年退職した戸島氏は、2002年にタイ警察の要請を受けて、渡タイ。タイ警察では警察大佐として、鑑識技術、捜査手法の指導を行い、タイ国での犯罪検挙率アップに努力されています。
(タイ警察エンブレム:刀と盾がモチーフ)
当コラムでご紹介したいのは、「捜査現場でしか知ることのできない」ともいえる、戸島氏の日本とタイの犯罪の比較論です。
日本では警察官が捜査の経験や事件を振り返るような談話はまずありません。ましてや、現役の警察官が捜査中の事件についてコメントしようものなら、それ自体が事件になってしまいます。
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人間は全ての者が癖(へき)を持つ。人間に限らず動物もしかり、例えば競走馬が10頭いれば10頭の癖があり、それはレースに現れる。人間の癖は犯罪にも現れる。そして治るものと治らないものがある。酒癖というのは、酒を飲まなければ癖が出ない。しかし、火付け、性癖、盗癖は治らない。日本とタイのそれぞれの事情を比べながら、癖と犯罪を紹介する。
「タイ犯罪事情 癖(へき)と犯罪」冒頭
戸島 国雄 氏(タイ警察現役警察大佐)
話の出だしから、警察官ならではの観察眼を披露されています。このあと、一般人には思いもよらない「犯罪とは何か」が次々と語られていきます。
戸島氏が語る「タイ犯罪事情 癖(へき)と犯罪」 全4回をリンクにてご紹介します。
(1)犯人が必ず現場に現れる火付け
(2)仕事のストレスとは無縁の性犯罪
(3)タイの空き巣は電線伝いに屋根から
(4)日本人以外のスリは凶器を所持
(日本語総合情報サイト@タイランド newsclip 2015年7月掲出)
この記事が出た翌月の8月、コラム冒頭に紹介した「バンコク連続爆弾事件」が起きました。こちらの事件についても戸島氏の分析がくわしく語られています。
戸島国雄タイ警察大佐に聞く バンコク連続爆弾事件(1) 浮かび上がる犯人像
外国人旅行者が数多く訪れるバンコク都心のラチャプラソン交差点で8月17日に起きた爆弾事件。タイ人や中国人など20人が死亡、日本人男性1人を含む128人が重軽傷を負い、現場を走行中の自動車、バイク数十台が破損、一部が炎上した。
―爆弾事件そのものについて
私が捜査に当たった事件だけでも、1974年に発生した東アジア反日武装戦線「狼」による「三菱重工爆破事件」、同年の「鹿島建設爆破事件」、翌年の「間組爆破事件」など多くの爆弾事件があり、日本も無差別爆弾テロというものを経験している。現代の日本人はとかく、「タイだからこのような物騒な事件が起きる」と思いがちだが、事件が起きる可能性というのはどの国も変わらない。
(日本語総合情報サイト@タイランド newsclip 2015年9月6日掲出)
(2)評価される初期活動と捜査
(3)日本以上の治安維持への取り組み
この他にも、戸島氏のこれまでの経験が本になっています。
『タイに渡った鑑識捜査官~妻がくれた第二の人生』
(著者:戸島 国雄 並木書房)
『警視庁似顔絵捜査官001号』
(著者:戸島 国雄 並木書房)
戸島氏がタイ国に渡られたからこそ、私たち日本人が読むことができる貴重な記事、書籍が生まれました。
国内はもとより、海外出張などで犯罪に巻き込まれないためにも、ご一読をおすすめします。(水)
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