トマト卵炒め。徹底的にカンタンでおそろしくうまい。
これを語らずしてカンタン手料理の看板はあげられない。カンタン手料理11回目にしてようやく登場したのは、旬のトマトが手に入る季節になるまで書くのを我慢していたためだ。
中国語では(西紅柿炒鶏蛋/シーホンシー・チャオ・ジーダン)と書くらしい。間違いなく中国家庭料理の王道。露地物のトマトが出回る今が作り時の、夏の定番料理だ。
筆者が初めて食べたのは、まだ世の中は昭和と言っていた時代。中国大陸からの留学生たちとふとしたことから仲良くなり、かれらのアパートでごちそうになった一品だ。なお、留学生たちはいずれも二十歳そこそこの男子だった。
共働きの中国では、おとうさんも子供も手が空いているものがご飯の支度をする。だから、男の子でも中華料理の10品程度はすぐに作れると言っていた。GDP世界第二位になった現在は知らない。
中国大陸ではあまりにも家庭的な料理らしく、中華レストランでメニューに載っていることはまずない。料亭の献立にお茶漬けや、卵かけご飯がないのと同じ理由だろう。
【材料(二人前)】
・卵-4~6個
・トマト-中玉2~3個(好みで青みの残るもの、完熟など)
・砂糖-大さじ2~3
・塩-お好みでひとつまみ
【作り方-北京家庭風・ハードタイプ-】
1.卵を割り、よく溶いておく
2.トマトはヘタを取ってざく切り。皮はむかなくていい
3.中華鍋かフライパンに油大さじ1~2を熱し、溶いた卵を入れる
4.堅めのオムレツくらいに両面をしっかり焼いてとりだす
5.油大さじ1を足して、ざく切りにしたトマトを炒める
6.トマトの形が崩れて汁が出たら、砂糖大さじ2~4を投入
7.オムレツを投入。フライ返しでオムレツを食べやすくカットする
8.トマトはぐちゃぐちゃ、オムレツは四角くカットしたら完成
※注意 火力は最後まで強火
北京出身の現役学生から、我が家はハード派でトマト1個につき卵は2個です、とアドバイスをいただきました。ありがとう、劉くん。
【作り方-レストラン風・とろとろタイプ-】
4の卵を半熟のとろとろにする流派もある
トマトは青みの残る堅めがいい派、完熟の柔らかめを主張する派など、派閥は複雑に入り組んでいる。何度か作って自分好みの味を見つけるのがいいだろう。シンプルな料理だけに素材の味がストレートに出る。材料選びで味はどのようにでも変わるおもしろい料理だ。
【食べ方】
薬味は砂糖以外入れてはいけない。トマトの酸味と砂糖の甘さのハーモニーを楽しむべし。食べ方はご飯にのせて食べる。これだけ。
震災前、今はなき立川駅の中華レストランでトマト卵炒めを頼んだことがあった。メニューになかったが、大陸の人なら作れるだろうと。
オーダーは受け付けられ、出てきたのは卵とろとろ派だった。筆者は北京家庭風ハードタイプが食べたかったが、卵とろとろもそれなりにうまかった。
中国大陸で育った人に何派か尋ねれば、間違いなくとろとろ派とハード派に分かれておもしろい舌戦を見せてくれるだろう。(水)
食と料理一覧へ |