平成27年6月1日から施行されることになった道路交通法に、あの身近な乗り物にもついに罰則が導入されました。その乗り物とは、自転車です。
これまで自転車は道路交通法では明確な処罰規定がなく、道路を縦横無尽に駆け回っていた感がありました。あげくには歩行者とぶつかって重傷を負わせるなど、その危険性が指摘されながら野放し状態でした。
脚力にまかせてこげばこぐほど早く目的地に着くと思われがちですが、最近ではスポーツ自転車の高速性能が思わぬ大事故を招いているようです。また、片手にスマホ、耳にイヤホンといった危険きわまりない「ながら運転」も見かけます。
運転免許もいらないため、どんな危険な運転をしようが免停にはならず「あぶないよ」の注意だけにとどまっていました。
その自転車運転ですが、「違反行為となる危険な運転」で2回以上摘発された人は、有料の3時間講習が命じられるようになりました。従わなかった場合は、罰金刑(5万円以下)が科せられます。
暴走する一方だった自転車に、ようやく一定の歯止めがかけられることになりました。
では「危険な違反行為」とはどんな行為を指すのでしょうか。
・信号無視
(クルマでは考えられないけれど自転車は意外に多い)
・下りている踏切の立ち入り・横断
(命をかけてどこへいくのか)
・一時不停止
(いそぐならクルマか電車が速いのに)
・歩道の危険走行
(歩道は歩く人が優先)
・ブレーキがない・きかない自転車
(そもそも停まる気持ちがない)
・車道の右側走行違反(いわゆる逆走)
(原則として車道の左側を走る)
・飲酒運転
(判断が鈍りがち)
・安全運転義務違反
(スマホや音楽プレーヤーなどのながら運転)
・二人乗り、三人乗り
(6歳未満の幼児を同乗できる構造であるなら可)
・並んで走る並走
(画像出典:警察庁ホームページ「自転車運転者講習の対象となる危険行為」を加工して作成)
ほとんどの禁止内容は誰が見ても危険行為であり、罰則が導入されたことに異論はないでしょう。
少しまごつくのが、では道路のどこを走ればいいのか、という問題でしょう。車道か歩道か、迷うことも多いはずです。自転車で歩道を走るのは全面禁止ではありませんが、歩行者優先で車道寄りを「徐行」することで、自転車走行が許可されています。
また、標識の指示がない限り、自転車も軽車両として左側走行が義務づけられています。道路の右側走行は逆走にあたりますので、危険な違反運転となります。
これ以外にも、夜間の無点灯、交差点で安全進行の義務違反、優先車両への妨害なども危険運転にあげられています。
すでに2年前の平成25年から、ブレーキのない自転車は公道を走行できなくなっています。ブレーキがあっても整備不良と言われてその場で整備が難しい場合、その自転車の運転はできなくなります。またこれらの命令に違反すると罰則が科せられます。
特に気をつけたいのは、平成23年から自転車に一方通行規制を示す標識が設置され始めたことです。通勤・通学で自転車をよく利用される方は、通い慣れた道の標識にもご注意ください。
また、主婦の方が子供と一緒の二人乗り三人乗りすることは、幼児は6歳までで子供用椅子が装備されている場合に限ります。自転車メーカーはバランスをとる練習を十分にすることと、幼児用ヘルメットの着用もすすめています。
気楽に乗れて、エコな乗り物として見直されている自転車ですが、通勤や通学などで時間に追われる場合は、ついつい気持ちに焦りが出てしまいます。
健康と経済性が両立した自転車利用です。せっかく手に入れた健康も事故にあってしまえば、元も子もありません。
自転車の運転ルールをただしく理解して、今までのこうだろう、こうだったはずの思い込み運転を改めてみてはいかがでしょうか。(水)
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参考資料:『わかる 身につく 交通教本』-平成27年4月-
編集・発行 一般財団法人全日本交通安全協会
http://www.jtsa.or.jp/about/teaching.html
道路交通法の改正のポイント
http://www.jtsa.or.jp/new/koutsuhou-kaisei.html
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