2 電話はメモを取れ
新人の机って部長や課長のすぐそばに置かれませんか。ただでさえ緊張しているわけですから、机の配置ひとつでもさらなる無言のプレッシャーと感じてしまうのです。
そんな気持ちに追い打ちをかけるのが電話です。チリンと鳴ったら真っ先に取るのが新人の仕事。背後の部長席、左隣の課長席、目の前の係長席と3つの電話を見張らなければなりません。気分は牧羊犬ですが仕方ありません。できることはそれくらいしかないのですから。
電話の向こうから聞き慣れない社名が飛び込んできました。いや自分的には聞き慣れている言葉ですが、まさかそれが社名だったとは。失礼しました。知ってる会社サンです、元気に取り次ぎましょう。
「係長、ボンカレーさんからお電話です」
怒ったように受話器をもぎ取り、会話を始める係長。
電話を切ったときの係長の目はみごとな三角でした。
係長「さっき社名、なんて言った」
私「はい、ボンカレーさん」
係長「ばかやろう、カレーじゃない、カラーだ」
部長以下全員大爆笑。「電話はしっかり聞きとれ」言われずともわかってますが、人生の経験値の低さゆえ、ついつい自分のボキャブラリーに引きずられてしまうのが新人です。たとえて言えば、使えない類似語を押しつけてくるダメな検索エンジン、薄い辞書を持たされて誤変換だらけのワープロ。
みっちり油を絞られた新人は、次の日からメモ帳片手に電話の見張りに励むこととなりました。
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